コーヒーで旅する日本/九州編|佐賀を代表するコーヒーショップになる。明確な目標を胸に歩む「ROLE PLAYING COFFEE」

九州ウォーカー

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全国的に盛り上がりを見せるコーヒーシーン。飲食店という枠を超え、さまざまなライフスタイルやカルチャーと溶け合っている。なかでも九州はトップクラスのロースターやバリスタが存在し、コーヒーカルチャーの進化が顕著だ。そんな九州で注目のショップを紹介する当連載。店主や店長たちが気になる店へと数珠つなぎで回を重ねていく。

店の目の前は佐賀駅バスセンター

九州編の第39回は、佐賀市にある「ROLE PLAYING COFFEE」。JR佐賀駅前に2020年1月にオープンしたコーヒーショップで、オーナーを務めるのは武藤勇樹さん。福岡市内のコーヒースタンドで、バリスタとして技術を磨き、27歳までになにかしらの形で独立するという目標を、コーヒーショップ開業で叶えた。そんな武藤さんをはじめ、店の常連からスタッフとなり、今や焙煎・抽出を任されている店長の貞松健太さん。2人が目指す同店の未来、そしてその夢を叶えるために意識していることとは。

オーナーの武藤勇樹さん(左)、店長の貞松健太さん(右)

Profile|武藤勇樹(むとう・ゆうき)
1992(平成4)年、佐賀県佐賀市生まれ。地元の高校を卒業後、福岡市の専門学校に進学。趣味でイラストを描き続け、その縁からギャラリーを併設した福岡市内のコーヒースタンド「SUP STAND」の店長を任される。約2年、同店にて店長を務めた後、独立。2020年1月に「ROLE PLAYING COFFEE」をオープン。店長の貞松健太さんは1996(平成8)年、佐賀県武雄市生まれ。もともと「ROLE PLAYING COFFEE」の常連で、武藤さんの誘いもあり、同店のスタッフに。今は店長として、コーヒーの抽出から、焙煎まで幅広く店を任されている。

佐賀駅前のオレンジ色のコーヒー屋さんに

屋号よりもCOFFEEの文字が目立つファサード

JR佐賀駅前でひときわ目立つオレンジの外壁に青色でCOFFEEの文字。「ROLE PLAYING COFFEE」のオーナーの武藤勇樹さんは「誰が見ても、ここはコーヒー屋なんだ、とわかるようなファサードを意識しました。佐賀駅バスセンターのちょうど目の前にあり、高架を挟んだ道路からも見える立地。店名などをごちゃごちゃ書くよりも、コーヒーが飲める場所と認識されることが大切だと考えました」と話す。

「ロールプレイングゲームのように佐賀のコーヒー屋さん巡りをしてもらえたら」と武藤さん

冒頭からそう語るように、武藤さんはブランディングやマーケティングに長けていると感じる人だ。もちろん、福岡市内のコーヒースタンドでバリスタとしてコーヒーの味わいの良し悪しを判断する能力、抽出技術は培ってきたが、「有名なコーヒーショップで修業したわけではないですし、自分自身、その点に関して引け目に感じていたのは事実。ただ、逆を言えば、やり方次第ではさまざまな可能性があると思う」と武藤さん。

目標を達成するために学びの機会を

豆がセレクトできるハンドドリップコーヒー(600円〜)

店をオープンし、最初は東京のUNLIMITED COFFEE ROASTERS、Coffee Supremeから豆を仕入れていた。その理由を武藤さんは「福岡など近隣のロースタリーから豆を仕入れる選択肢もありましたが、どうせ仕入れるのであれば、佐賀ではなかなか飲めないロースタリーのコーヒーをお客さまに味わっていただきたいと考えました」と語る。これは、新たな体験、提案を大切にするという武藤さんの姿勢だろう。

実際、東京などにある有名なロースタリーのコーヒーが飲める店は九州では少ない。自家焙煎でオリジナリティを出すのはもちろん正攻法だが、逆に九州ではなかなか飲めない店のコーヒーをイベント的に提供するといった取り組みもおもしろいのではないだろうか。

店長の貞松さん。ハンドドリップは淹れ手により味のブレが出ないよう、浸漬式のHARIOスイッチを採用

そんなスタンスでスタートした「ROLE PLAYING COFFEE」。オープンから1年強を経て、2021年5月から貞松さんをスタッフとして迎えた。貞松さんは九州はもちろん、関東や関西のコーヒーショップを巡り歩くほど大のコーヒー好きだが、前職は美容師のため、技術的な面でコーヒーに精通しているかと問われると、答えはNOだ。ただ、さまざまな店のコーヒーを飲み歩き、各店が表現する味わいの個性、キャラクターを自分なりに把握し、自信が作りたい味も明確にある。そんな背景があり、2人は「よりオリジナリティのあるコーヒー、味わい作りを」という話し合いを何度も重ね、自家焙煎への挑戦を決めた。

昨今、小型で比較的リーズナブルな焙煎機も増えてきたことで、自家焙煎にチャレンジしやすい環境になってきた。一方で生豆の仕入れ先は限られており、自家焙煎を始めたからといって、他店と明確な差別化を図るのが難しいのは事実。だからこそ、焙煎というのは一筋縄ではいかない。

焙煎機はフジローヤル半熱風式1キロ

フジローヤルの半熱風式1キロ窯を導入し、まずはメーカーからの指導や動画などを参考に焙煎をスタート。焙煎を主に任された貞松さんは、「最初、納得がいく味わいに焼くことがなかなかできず、半年間はお客さまにご提供することができませんでした。うまく焼けない悔しさはもちろんありましたが、焙煎と向き合う時間が僕の性に合っていたんだと思います。もっとおいしく、もっと納得のいく味わいをと日々考えていて、武藤と一緒に2021年11月、東京で開催されたSCAJ(※1)に行ったんです。SCAJで全国各地のロースタリーやコーヒーショップのコーヒーを飲み、店のスタイルや味作りを肌で感じ、『1年後にロースターとしてSCAJに参加できるように技術、知識を高めていこう』と武藤と話しました」と貞松さん。

豆売りにも力を入れている

驚かされるのが武藤さんは、SCAJに行ったその足で大阪にあるBarista Map Coffee Roasters(※2)にそのまま向かったこと。「しっかりと理論的においしいコーヒーをお客さまにご提供するために、Barista Map Coffee Roastersさんにトレーニングを依頼しました。SCAJへの参加目標を“1年後”とあえて期限を設けたのも、目標やゴールは明確に掲げていた方が成長も速いという考えから。もちろん自分たちで試行錯誤しながら、おいしいコーヒーを焙煎し、抽出することもできると思いますが、今後のためにしっかりとした土台を作り上げるという意味では、確かな技術を持っている方に指導を仰ぐ方が良いと私は考えました」と武藤さん。すぐに行動に移し、次の目標達成へと歩み始めた「ROLE PLAYING COFFEE」。この行動力こそが武藤さんの強みだ。

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