コーヒーで旅する日本/東海編|コーヒー業界の一端を担うべく、やるべきこととやらなくてもいいことを選択していく。「コクウ珈琲」

東海ウォーカー

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自分がやりたいことに対して、ぶれない姿勢

篠田さんにとってコーヒーは「あって当然、ないと困る、水のようなもの」

将来、自分がどんな仕事をして生きるのかを考えた時に「興味あることがコーヒーくらいだった」と当時を振り返る篠田さん。自家焙煎コーヒー店という営業スタイルを知り、焙煎を教えてくれるところを探している時に、愛知県西尾市の「フレーバーコーヒー」の中川正志さんに出会った。「抽出と焙煎を教わるために、3年くらい通いました。特に、抽出に関しては、中川さんが教えてくれた松屋式ドリップを私が繋いでいきたいという気持ちでやっています」

抽出の様子にも迷いや無駄がなく、手際の良さに驚く

コーヒーミルの設定は最も粗挽きに。蒸らしを十分にして、豆の状態を確認しながらお湯の注ぎ方で抽出具合をコントロールしていく。濃くゆっくりと抽出し、半分程度まで淹れ終わったらストップ。これが、すっきりとしたコーヒーの旨味を存分に引き出す松屋式ドリップの極意だ。サーバーは「上から見て、どれくらいの量を抽出したのかメモリを確認できるところが使いやすいんです」と、プラスチック製の料理用メジャーカップを採用。自分にとって何が大切なのかを選び、余分をそぎ落とす篠田さんのシンプルな生き方が、こんなところにも垣間見える。

営業中に焙煎。タイマーが鳴ると、温度をチェックしたりダンパーを触ったりと、豆の様子を確認する

抽出に関しては「師匠である中川さんの手法を技術的にも精神的にも繋いでいきたい」と語る篠田さんだが、焙煎に関しては自分のやりやすいように試行錯誤を重ねてきた。「中川さんの焙煎は浅めが多いんですが、自分としては深い味が好き。だから、焙煎に関しては基礎的なところを教わって、開業してからもいろいろとやってみて、自分なりのやり方に変えてきました。結果、細かくデータを取りながら付きっきりで焙煎するのではなく、タイマーを駆使しながら温度に注意して焙煎するようになりました(笑)」と大らかな焙煎スタイルを明かしてくれた。

「ハンドピックは特に気の抜けない作業」と篠田さん

その分、ハンドピックはシビアにチェックし、焙煎した豆の10%ほどを弾いてしまうのだとか。「私は生豆アレルギーなので、焙煎後に選別します。粒を揃えたいので、形がキレイじゃないものは弾きます」と、焙煎後の豆を見つめる表情は真剣そのものだ。

「おいしい」と言ってもらえるコーヒー

すっきりとした飲み口に、コーヒー特有のコクと香りが軽やかに漂う

篠田さんのコーヒー体験の原点は、家族や友人と過ごした地元の喫茶店にある。「愛知県一宮市というところは、喫茶店が生活に根付いた場所でした。私の家でも例にもれず、子供のころから家族揃って喫茶店に通ったものです。高校を卒業してからも、地元発祥のコーヒーチェーンや駅前の小さなコーヒー店に友人たちと集まり、時間を問わず楽しい時間を過ごしながら『コーヒーっておいしいな』と思っていました」

篠田さんの淹れるコーヒーには、「コーヒーが好き」という気持ちが溢れている

そんな篠田さんが大切にしていることは、店を訪れる人にも「コーヒーっておいしいな」と思ってもらうこと。「うちのお客様像は『おいしいコーヒーを家で飲みたい』というライト層。だから、飲んでおいしいと思ってもらえるコーヒーを届けたい。純粋な『おいしい!』という気持ちは、何物にも代えがたいと思っています。そのためには、私自身も楽しく、そして長く営業を続けていきたいですね。コーヒーを生業としているからには、とにかく長く続けることがひとつの目標。そのためにどうするのかを考え続けてきました。正解はありません。ただ、コーヒー業界の一端を担っていくためには、それぞれがやらなければならないことと、やらなくてもいいことを選択してくことが大切なんだと思います」

開業してからこれまで、サードウェーブやスペシャルティコーヒーに注目が集まるなど東海エリアのコーヒー業界にもさまざまな動きがあったが、「コーヒーファンが増えることは悪いことではないし、幅が広がってよかった」と話すように、篠田さん自身が変わることはなかった。開業から14年目を迎え、ようやく「こうなったらいいな」という理想の姿に近づいてきた「コクウ珈琲」。「やりたいことの方向性は間違ってなかった」と話す篠田さんは、充実した「今」を楽しんでいる。

篠田さんレコメンドのコーヒーショップは「星屑珈琲」

「コロナ前は、コーヒー店主を店に招いて、コーヒーの楽しさを伝えるイベントをよく開催していました。その取り組みの一環で出会った名古屋市の『星屑珈琲』は、個人的にも通っているお気に入りの店です。伝説の珈琲店と言われる『大坊珈琲店』の影響を色濃く受けていて、手回し焙煎機による深煎りの豆をネルで抽出してくれます。夜に営業している、おいしいコーヒー店はなかなか少ないこともあり、とてもいい店だと思います」(篠田さん)


【コクウ珈琲のコーヒーデータ】
●焙煎機/フジローヤル直火式3キロ
●抽出/ハンドドリップ(松屋式、ネル)
●焙煎度合い/中煎り~深煎り
●テイクアウト/あり
●豆の販売/200グラム1200円~

取材・文=大川真由美
撮影=古川寛二


※新型コロナウイルス感染症(COVID-19)拡大防止にご配慮のうえおでかけください。マスク着用、3密(密閉、密集、密接)回避、ソーシャルディスタンスの確保、咳エチケットの遵守を心がけましょう。

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