コーヒーで旅する日本/九州編|福岡をコーヒーの街にした立役者。伝え教えていくことを続けた「ハニー珈琲」

九州ウォーカー

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福岡をコーヒーの街に

全種の豆を取りそろえる福岡三越店。ゲイシャなど希少で高価な豆も並ぶ

「珈琲の味方塾」でスペシャルティコーヒーの生豆の共同買い付けを始めた「ハニー珈琲」。これが2000年ごろで、日本にはスペシャルティコーヒーそのものがまったくない時代。東京のように先端が集まる場所ならまだしも、地方都市である福岡でスペシャルティコーヒーを浸透させるのは相当な苦労があったのではないか。

全種試飲を用意するのが「ハニー珈琲」らしい豆売りスタイル

「まず飲んでもらわないといけないという点で、苦労はありましたね。それで豆をご購入くださったお客様にカプチーノをサービスするなど、いろいろやりました。なかでもわかりやすいと好評だったのが全種の豆の試飲。それまでのコーヒーは冷めると雑味が表に出て美味しくないというのが一般的でしたが、スペシャルティコーヒーはそのクリアな味わいから、冷めても美味しいんですよね。むしろ冷めた方が味わいがわかりやすい。さらに淹れ方もコーヒー粉に湯をそのまま注ぎ、最後に茶こしで濾すだけという方法がスペシャルティコーヒーには最適ですから、手間もかからない。このやり方を思いついた時は、革新的だと自画自賛でしたね」と笑う井崎さん。

茶こしコーヒーは、奥さんの母親が急須でコーヒーを淹れていたのがヒントになったそう

そうやって少しずつ「ハニー珈琲」はファンを増やし、福岡にスペシャルティコーヒーを広めてきた。井崎さんは「コーヒーを主体としたカフェを営んでいた若手のバリスタたちがスペシャルティコーヒーに興味を持ち、うちの豆を店で使ってくれたのも大きかった。manucoffeeのオーナー西岡さんをはじめ、そこで働いていたREC COFFEEの岩瀬さんたちが、”ハニー珈琲の豆を使ってカフェをやりたい”と言って、若い世代のお客様にもスペシャルティコーヒーの美味しさを広めてくれました」と話す。

土日のみ営業している那珂本店

そのことを REC COFFEE の岩瀬由和さんは、「『珈琲の味方塾』で学んだことを井崎さんはすべて教えてくれた。とくにカッピング技術を磨き、味わいを客観的に判断できることが大切で、それが基本だと口酸っぱく言われました」と話す。

こういった教える、後進に伝えていくという行為はもともと学習塾を経営し、多くの子供たちに勉強を教えてきた井崎さんならではかもしれない。福岡のコーヒー業界において、「2000年ごろから10年以上にわたり『ハニー珈琲』さんが業界を巻き込みながら行ってきた活動の意味はとても大きい。『ハニー珈琲』さんがあったからこそ福岡のコーヒーシーンは大きく成長したと思う」という声が福岡のコーヒー業界で聞こえてくるのも納得だ。

27年前と思いは変わらず

福岡三越店は豆売りの旗艦店的な位置づけ。カフェ利用なら高宮店や小倉店がおすすめだ

そんな「ハニー珈琲」は現在、福岡県内に8店舗を展開し、ますますファンを増やしているところだ。もちろん生豆はスペシャルティコーヒーにこだわり、さらに第15代ワールドバリスタチャンピオンである長男、井崎英典さんのつながりから「プロジェクト・オリジン」と共同で生豆の買い付けを行うなど、よりオリジナリティあふれるコーヒーを提案中。

プロジェクト・オリジンのラインナップはここ数年で増えてきている

「プロジェクト・オリジン」とは、第16代ワールドバリスタチャンピオンのササ・セスティック氏(オーストラリア)が創設した生豆買付会社で、コーヒー精製処理にワイン醸造の手法を取り入れるなど、常に革新的な取り組みを行っていることで世界的にも注目を集めている。

産地に足を運び生豆を買い付けるのが基本

井崎さんは「私のコーヒーの原点は、20年以上前に初めて飲んだスペシャルティコーヒーに感動したあの体験。よりコーヒーの世界を深く知るにつれ、そういった体験や、感動する機会は増えています。純粋にそういった体験をよりたくさんのお客様にお届けしたい、世界にはこんな素晴らしいコーヒーがあるんだということをお伝えしたい、そして、家庭で気軽に飲んでほしい、というのが行動の原動力です。そのためにもっとコーヒーと真摯に向き合い、さらに生産者の方々、コーヒーの流通に関わる人々と信頼関係を築いていく必要があると思っています。最初は私と妻だけで細々とやっていたコーヒーショップでしたが、今はおかげさまで店舗も増え、さらに会社を支えてくれるスタッフがいる。これは27年間、『ハニー珈琲』を続けてきた中での大きな変化です。ただ、コーヒーに傾ける思い、品質をひたすら追求していくという点では創業時となにも変わりませんね」と優しく微笑む。

井崎さんレコメンドのコーヒーショップは「リトルスタンド」

「『リトルスタンド』の野方くんとは、もう15年ぐらいの付き合いになるでしょうか。もともと、うちで長く働いてくれていたスタッフで、暖簾分けのような形で『リトルハニー大名店』という店を始めたんです。彼はとても真面目で、トレンドに迎合することなく、でもしっかりとオリジナリティを持っている。そこで『リトルハニー』という暖簾分けのままでは、彼の独自性を発揮できないのではないかと思い、屋号を『リトルスタンド』に改めることを賛成して、今に至ります」(井崎さん)

【ハニー珈琲 那珂本店のコーヒーデータ】
●焙煎機/Petroncini TTA-30(30キロ)、Probat G-12(12キロ)
●抽出/フレンチプレス、エスプレッソマシン(シモネリT-3 2グループ)、エスプレッソグラインダー EG-1、メイングラインダー マッツアー
●焙煎度合い/浅煎り〜深煎り(原料の良さを発揮できる焙煎度合い)
●テイクアウト/あり
●豆の販売/100グラム864円〜


取材・文=諫山力(knot)
撮影=大野博之(FAKE.)

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