コーヒーで旅する日本/九州編|だれかに喜んでもらいたいから、よいモノ・コトを伝える“間”で。「And Barissier」

九州ウォーカー

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全国的に盛り上がりを見せるコーヒーシーン。飲食店という枠を超え、さまざまなライフスタイルやカルチャーと溶け合っている。
なかでも九州はトップクラスのロースターやバリスタが存在し、コーヒーカルチャーの進化が顕著だ。そんな九州で注目のショップを紹介する当連載。店主や店長たちが気になる店へと数珠つなぎで回を重ねていく。

手作りスイーツとコーヒーのペアリングを楽しみたいカフェ

九州編の第71回は長崎市にある「And Barissier」。アンド バリシエと読み、コーヒーを柱とした店であることからバリスタが語源であることはなんとなく想像できるが、“シエ”がいまいちわからない。ただ、同店をレコメンドしてくれたリトルスタンドの野方さんのコメントの中に「スイーツがおいしくて」というヒントがあった。そう、バリシエが表すのは、バリスタ×パティシエだ。目立たない雑居ビル2階と隠れ家的な立地ながら、2019年7月の開店以来、着実にファンを増やす人気カフェ。同店の魅力に迫る。

店主の井手克哉さんは、バリスタとパティシエ、二足のわらじ

Profile|井手克哉(いで・かつや)
長崎県長崎市生まれ。大学在学中に菓子作りの楽しさに魅了され、製菓の専門学校へ入学。福岡の大手スーパーの製菓部門に就職。スーパーが運営する喫茶店に異動したのを機に、抽出について学び始めたのがコーヒーの入口。そんな日々を過ごすにつれコーヒーの世界の奥深さに気付き、一気にコーヒーの魅力に引き込まれる。その後、福岡のタウンスクエアコーヒーに入社。バリスタ業務に加え、焙煎にも携わる。転職と就職を機にパートナーの由梨亜さんと共に長崎に帰郷。2018年末から、間借り営業で「And Barissier」を開業。2019年7月、実店舗をオープンし、現在は夫妻として店を営む。

ちょっとミステリアスな雑居ビルに

細路地沿いにあるビル前の白い看板が目印

長崎一の繁華街と称される浜町アーケードの比較的近くだが、目抜き通りから少し外れたら長崎らしい細路地が入り組んでおり、そんな下町感がおもしろい長崎市中心部。「And Barissier」があるのはそんなローカルな町並みの一角だ。しかも雑居ビルの2階と、「偶然目にしてふらりと立ち寄って」という感じで訪れることはほぼないだろう。
ただ、2019年7月のオープンから、着実にファンを増やし、地元民が日常的に狙って訪れるカフェとして認知を広めている。その理由は前述したように隠れ家的で、知る人ぞ知る的な雰囲気を醸し出しているのも大きいと感じた。実際自分が日々の暮らしの中でこんなカフェを見つけたら、とっておきの店として友人たちに自慢したくなりそうだ。

入口もどこかアジトのような雰囲気

看板を目印に階段を上がる。階段もビル関係者専用のような閉塞的な空間で、本当にこの場所で合っているのか心配になるほど。ただ、2階まで上がると、小さなドアに手書きで“バリシエ”の文字。ここまでで結構なドキドキ感を味わえたが、さらにドアの向こう側が見えないから、まだまだワクワクは続く。

グリーンやドライフラワーが彩るカフェスペース

ドアを開けるとたくさんの観葉植物やドライフラワーなどに彩られたナチュラルな空間。アプローチからアジトや屋根裏のような雰囲気を想像していただけに、このギャップが逆によい。
窓も大きく取られ、採光がよく明るい空間が広がる。出迎えてくれた店主の井手克哉さんもニコニコと朗らかで、これは一度訪れたらハマりそう、といった第一印象だ。

偶然働いた店が転機の一つに

ドリッパーは豆によってORIGAMI、HARIO V60、Kalitaウェーブを使い分ける

井手さんがコーヒーにおもしろさを感じたのはスーパーを運営する企業にいたころ。
「よくある話ですが、それまではコーヒーがあまり好きじゃなくて(笑)。スーパーの中に入っていた喫茶店はサイフォンでコーヒーを淹れていて、そこに配属されてから、コーヒーっておいしいと感じられるようになりました。それからは抽出技術を競うUCCコーヒーマスターズに出場してみたり、自分なりにできるところからコーヒーについて学んできましたね。そうするともっとコーヒーのことをしっかり勉強したいと思い始めて、勤めていたスーパーを退職しました。それから福岡市内のコーヒーの有名店で働けないか問い合わせてみたり。そんなときにタウンスクエアコーヒーのスタッフ募集を見つけて、幸いにも入社することができたんです。それが私にとっては本格的なコーヒーの入口ですかね」と井手さんは当時を振り返る。

どの焙煎度合いのコーヒーでも、比較的すっきりとした味わいなるよう心がけている

タウンスクエアコーヒーといえば、 COFFEE COUNTY の森さん、 Connect Coffee の安藤さん、 suzunari coffee の匹田さん、 タリル珈琲 の稲永さんなど本連載でも登場したロースター、バリスタを多く輩出している店。「入った当時はそんなすごい方々が在籍していることもまったく知りませんでしたし、幸運でしたね。もちろん私が働き始めたのと入れ替わりで森さんも退職され、諸先輩方と長く働いたというわけではありませんが、そういった大先輩たちが残した遺産のようなものはやっぱり店に息づいていて、学べることは相当多かったと感じています」と井手さん。
タウンスクエアコーヒーではちょうど焙煎するスタッフが欠員していたこともあり、井手さんは抽出に加え、焙煎も経験。スペシャルティコーヒーのポテンシャルを肌で感じることができたのも井手さんにとって大きな経験となった。

店の一角にあるベビーベッドは井手さん夫妻が赤ちゃんを寝かせたり、お客さんが利用したり

それから当時交際していた由梨亜さんと、お互いの故郷である長崎に帰ることを決める。それが2018年。ただそのとき、まだ井手さんは自身の店を持つということはあまり意識していなかったそうだ。
「もともと長崎に帰ってきたのは前の仕事の絡みがあったからだったんですが、それが残念ながら軌道にのらず。それで前職は辞めたのですが、そのときぐらいから自分の店を持つということをおぼろげに考え始めました。そして、2018年末のとあるイベントで佐賀のみちくさコーヒーさんの出店のお手伝いをしたことで、その思いは強くなりましたし、それに伴って環境も少しずつ変わってきて。当時パートナーだった妻も私と同意見で『二人なら一緒にやっていける』って思えたのも大きかったですね」

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