コーヒーで旅する日本/九州編|時間を気にせず、ただ海を眺めて。「きまま焙煎所」に流れる物語がコーヒーを特別なものに
九州ウォーカー
地元のおじさんが作ってくれた焙煎機

菅原さん、奥さんの真希さんともにコーヒー好きで、コミュニティカフェを開くにあたり、唯一こだわれるコーヒーぐらいは自家焙煎しようと決めたそう。最初は少量焼ける手回し焙煎を独学で始め、意外にもうまく焼けたことから、自然な流れでコミュニティカフェのコーヒーは自家焙煎というのが謳い文句に。
そんな日々を過ごす中、地元の機械好きのおじさんが「一から独学の割にはおいしいコーヒーだ。ずっと手回しだと大変だろうから、わしが自動回転式の焙煎機を作ってやる」と提案してくれたそう。菅原さんは「そんなカスタムは絶対大変だろうから、最初はやんわりお断りしたんですが、それでも作ってくれると言ってくださるのでお願いすることにしました」

そしてプロトタイプが完成。菅原さんは「想像以上のクオリティの機構ができあがり、正直驚きました。そこで僕も調子にのっちゃって、『回転数が変えられるような仕組みがほしい』なんてわがままを言ってしまい。ご厚意で作ってくださっているのに図々しいですよね(苦笑)。ただそのリクエストにも応えていただき、回転数も変えられる自動回転式焙煎機が完成しました」と振り返る。最初は小型の200グラム、次に手回しで500グラム、そして容量は変わらずに自動回転式に進化。今はフジローヤルの半熱風式1キロがメインになっている。

この少しずつの成長が地元に根付き、周囲の人々に愛される「きまま焙煎所」。とにかく人当たりがよく、柔らかな性格で、そしてどこかおせっかいを焼きたくなるような雰囲気。それが菅原さんの人としての魅力だろう。
人柄が出る、優しいけど深みのあるコーヒー

そんな菅原さんが焙煎するコーヒーはハウスブレンド1種、ストレート3種から4種というラインナップ。産地の自然環境や暮らしに配慮した農園にこだわっていることから、基本的に無農薬栽培、有機栽培が多くなっているという。スペシャルティコーヒーにはあえて固執せず、伸びしろのあるオーガニックの生産者を選ぶようにしているほか、丁寧なハンドピックを徹底するのがモットーだ。
菅原さんは「香りがよい、甘さがあるなど、それぞれの生豆のおいしいと思えるポイント、一番の魅力を焙煎で引き出すよう心がけています。もちろんそこには豆の個性も含まれてきますが、あまり尖ったキャラクターはいらないかなというのが僕の考え。ご年配の方が多い地域柄、深煎りが好まれますしね」と話す。

個性を前面に押し出すのではなく、周りに溶け込むような味作りをしている「きまま焙煎所」。素泊まりが基本の「民泊 トンボロ」を営んでいるほか、教育大学で美術を専攻していた真希さんが絵画造形教室も行っている。ドライブがてらふらりとコーヒーを楽しむのもよいが、「民泊 トンボロ」に泊まって、「きまま焙煎所」や漁村にのんびり流れる時間を存分に体感するのもよさそうだ。


菅原さんレコメンドのコーヒーショップは「珈琲花坂」
「福岡市・大名にある『珈琲花坂』さん。直接知り合いとかではないのですが、一度お邪魔してすごくステキなお店だと思いました。バーを間借りされているそうですが、雑居ビル5階という隠れ家感もいいですし、なによりコーヒーがとってもおいしかったです」(菅原さん)
【きまま焙煎所のコーヒーデータ】
●焙煎機/フジローヤル半熱風式1キロ
●抽出/ハンドドリップ(コーノ式ドリッパー、HARIO V60)
●焙煎度合い/中煎り〜深煎り
●テイクアウト/あり
●豆の販売/100グラム620円〜
取材・文=諫山力(knot)
撮影=大野博之(FAKE.)
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