コーヒーで旅する日本/九州編|ちゃんと考えて、ちゃんと実行する。「Saï Coffee Roastery」の先鋭的なコーヒーとの関わり方
東京ウォーカー(全国版)
地域社会とつながるアクション

「Saï Coffee Roastery」は地方都市のいちロースタリーではあるが、齊藤さんのそんな考え方もあり、地域や社会とのつながりをとても大切に考えている。「当店では焙煎を行ううえで必須の生豆のハンドピックは、福祉施設の作業所の利用者さんにお願いしています。お店で行うことも可能ですが、障がいを持たれている方々にお願いできることがあれば、私たちは積極的にお願いしていきたい。暮らす環境が違っても、地域社会という枠ではみんなつながっていますから」と齊藤さん。
頭ではわかっていても、それを実行に移すのに、腰が重いという人は多いと思うが、齊藤さんはよいと考えたことはしっかり実行に移す行動力がある。これはどんな店を営むにあたっても非常に大切なことかもしれない。その地に店を構えるということは結局は地域に暮らす人たちとつながるということだから。
関わる人たちすべてにいい循環を生みたい

「Saï Coffee Roastery」で焙煎を担当しているのは入社4年ほどという女性社員。「最初は私が焙煎を担当していましたが、彼女に教えたところめきめき上達し、あっという間に私の焙煎スキルを超えました。自分より高い技術を持っていると感じたなら、たとえ自分の後輩だとしてもトップロースターの座を譲るのは当然」と、あっけらかんと話す齊藤さん。一般的に地位を人に譲ることに抵抗を持つ人は多いと思うが、齊藤さんにその考え方は一切ない。

さらに齊藤さんはこうも続ける。「彼女の秀でた焙煎技術もあり、当店のコーヒーは味のブレが極めて少ないと自負しています。その安定した味わいによって、ここ1、2年、カフェや美容室、レストランなど卸先も増えてきました。そして、当店ではバリスタが卸先に配達に行くようにしていて、味わいのクオリティコントロールもその際にしっかり行うようにしています。おいしいコーヒーを飲んでいただく機会を増やす草の根活動も私たちの大切な役目」

目先ではなく、長い目で物事を見て未来へと進む「Saï Coffee Roastery」。最後に齊藤さんはこう話して締めくくった。「コーヒーは農作物ですから、気候条件等によっては不作の年も当然あります。そんな時に“例年より質がよくないから仕入れない”ではなくて、逆に“次年への応援につながるようにいつもより多く買い付ける”、それぐらいの気持ちを持ってコーヒーと関わっていきたい。理想はエンドユーザーであるお客さまに、私たち店側が生産現場のリアルを伝え、それも納得いただいたうえでコーヒーを楽しんでいただけるような関係性を築くこと。関わる人たちすべてにいい循環が生まれるような取り組みを行っていくことが今の私の目標です」
齊藤さんレコメンドのコーヒーショップは「imm coffee&roastery」
「山口県岩国市にある『imm coffee&roastery』さん。店を営む津田さん夫妻の人間性に惹かれます。当店でキッチンカーを作るのに、ヒントをいただこうと思ったら、一から十まで教えてくれたり、本当に気さくでオープンなマインドを持った2人。もちろんコーヒーへのこだわりは強いですし、刺激を受けることも多いです」(齊藤さん)
【Saï Coffee Roasteryのコーヒーデータ】
●焙煎機/DIEDRICH5キロ半熱風式
●抽出/ハンドドリップ(HARIO V60、クレバードリッパー)、エスプレッソマシン(SYNESSO)
●焙煎度合い/浅煎り〜深煎り
●テイクアウト/あり
●豆の販売/100グラム900円〜
取材・文=諫山力(knot)
撮影=加藤淳史(Saint-Loup-de-Varennes)
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