河合優実「現場に行くのが本当に幸せだった」、最新主演作「ナミビアの砂漠」が公開
東京ウォーカー(全国版)
ドラマ「不適切にもほどがある!」で一躍注目を集め、今年は「四月になれば彼女は」や「あんのこと」、「ルックバック」(声の出演)など映画への出演が続く河合優実さん。最新主演作「ナミビアの砂漠」では、先の見えない“今”をもがき抗いながら生きる主人公のカナを演じている。本作の監督を務めた山中瑶子さんとのタッグを切望していたという河合さんに、本作への思いや撮影エピソード、さらに最近刺激を受けた作品などを語ってもらった。
高校生の頃に観た「山中監督の『あみこ』は思い入れの深い映画体験だった」
――山中瑶子監督の映画「あみこ」を観て衝撃を受けて以来、山中監督作品への参加を切望されていたそうですね。
【河合優実】まだ俳優業を始めていなかった高校生の頃に「あみこ」を観て圧倒されまして、それが自分にとってすごく思い入れの深い映画体験だったんです。その時に、手紙で“監督の作品に出演したい”という思いは山中監督に伝えていて、そこから5年ぐらい監督とはお会いする機会はありませんでした。
ある日、山中監督が映画を作るという噂を聞きつけまして、所属事務所からアプローチしてみたら、監督も「河合さん主演で作りたい」と思ってくださっていたらしく、本格的に企画がスタートしました。ようやく念願が叶って本作で主演を務めることが決まった時は、すごくうれしかったです。
――高校生の頃は「あみこ」のどんなところに圧倒されたのでしょうか。
【河合優実】シンプルにセリフや音楽、シーンの描写に山中監督の感性やセンスが詰まっていて、「あみこ」のすべてに刺激を受けました。当時は今ほど映画をたくさん観ていたわけではないので、映画に対する自分の評価軸がない状態で「あみこ」にビビっときたのは、やっぱり山中監督の感性がすごく好きだったからなんだろうなって。今振り返ってみると、改めてそう感じますね。ほかの作品では観たことのないようなセリフが「あみこ」には登場するので、そこにびっくりしたのも覚えています。
――「あみこ」のセリフやシーンで印象に残っているものがあれば教えてください。
【河合優実】登場人物が“この世の主悪の根源”みたいな内容の歌を歌いながら学校内を歩くシーンが印象的だったのと、突如ダンスシーンが始まった途端にあみこが音楽を止めて、「日本人は体が勝手に動き出したりしねえんだよ!」みたいなことを言うシーンがすごくおもしろくて鮮烈に覚えています(笑)。
――ちなみに「ナミビアの砂漠」で好きなシーンを挙げるとしたらどこでしょうか。
【河合優実】いっぱいありますけど…なかでも好きなのは、私が演じるカナが精神科医にオンラインで診療してもらっている時に、「自分のこと、わかりたいんで」っていうシーンと、金子大地さん演じるハヤシの家族のバーベキューに誘われたカナが、手土産を持っていこうとしたらハヤシから「持っていかなくていいよ」と言われて、「でも非常識な人だと思われたくない」って答えるシーンです。
自分のことがわからないカナだからこそ、観客の予想を裏切る言動をしてハッとさせるのですが、カナ自身も気付いていない自意識や社会性みたいなものがフッと言葉に表れる瞬間がすごくいいなって。この2つのシーンはぜひ注目してもらいたいです。
全員がよりよいものを作ろうとアイデアを出していましたし「現場に行くのが本当に幸せでした」
――念願の山中監督とご一緒してみていかがでしたか?
【河合優実】本作は山中監督のセンスが色濃く出ている作品ですが、現場ではいろいろな部署の人たちが自由に提案をして、それを監督が柔軟に取り入れて撮っていたのが意外でした。若いスタッフさんも多かったですし、自由度の高い現場でした。
――まるでカナのドキュメンタリーを見ているような生々しさがあるなと感じました。やり場のない感情を抱えるカナの複雑なキャラクターを表現するにあたり、意識されていたことがあれば教えてください。
【河合優実】カナは鬱っぽくなって不安定な状態に陥る場面もありますけど、暗く陰鬱としたイメージよりかは自由に走ったり歩いたり、暴れているイメージの方が合うと思ったんですね。それで、表情も含めた体の動きに関しては、“ルールに囚われずに生きる動物や子ども”のような奔放さを意識して演じていました。
――監督からは何かリクエストはありましたか?
【河合優実】表情に関しては具体的なリクエストはほとんどなかったですね。予告編にも登場する“目を見開いているカナ”の印象的なシーンも、監督に指示されたのではなく、現場で思いつきでやってみたら皆さんがおもしろがってくれて採用になりました。生々しいセリフは意外とすべて台本通りなのですが、仕草は自発的に生まれたものの方が多かったんじゃないかなと思います。
――ハヤシとカナがケンカをして、そのうち取っ組み合いになるシーンが何度かありましたが、撮影は大変でしたか?
【河合優実】大変でした…。取っ組み合いをするシーンはアクション部の方がアクションをつけてくださったのですが、体の大変さよりも、ケンカの動きの展開を構築していくのが難しかったです。観ていて“怖い”とドン引きするようなアクションではなく、“この人たちなにやってんの?”と思わず笑っちゃうような空気を監督が求めていたので、どうすればそういう風に見えるのか、試行錯誤しながら演じるのは難しいながらもやりがいのある挑戦でした。
――先ほど自由度の高い現場だったとお話しされていましたが、スタッフの方の個人的な体験もエピソードとして盛り込まれたと伺いました。
【河合優実】実体験を元にしたシーンは、当事者であるスタッフさんに「どんな感じでした?」と直接お話を聞けたので、すごくリアリティを感じながら演じることができました。例えば、寛一郎さん演じるホンダの背骨をカナが数えていたら、ホンダが崩れ落ちるというシーンがありますけど、あれも実際にスタッフさんが体験したことなんです。なので私もその時の様子をそのスタッフさんに聞きましたし、寛一郎さんも「どんな風に崩れ落ちたんですか?」って聞いていました(笑)。
――あれも実体験なのですね!!
【河合優実】そうなんです(笑)。
――大変な撮影も多かったと思いますが、今のエピソードを聞くと楽しい現場だったことが伝わります。
【河合優実】“次はどんなおもしろいシーンを撮ろう”みたいなワクワクした空気は常に現場に漂っていました。チーム全員がよりよいものを作ろうとアイデアをどんどん出していましたし、毎日現場に行くのが本当に幸せでしたね。
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