葉山の技あり古民家レストラン。プラスアルファのアイデアがつまった2軒

2018年4月23日 09:00更新

横浜ウォーカー

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古民家をベースに改装し、人が集まる和食店やカフェとしてオープンしつつ、集まったお客さんにプラスアルファの楽しみを提供してくれる“一度に二度おいしい”お店を紹介しよう。いずれもオーナーのこだわりと人脈・人望により作り上げられたオンリーワンの楽しみが味わえる、充実度満点の店舗だ。

伝統建築の技が集結した和食料理店! もうひとつの魅力とは!?


【写真を見る】新鮮なお刺身定食(1,700円)は単品(1,300円)でも提供。地魚刺身盛合せなどもあり、葉山でおいしいお魚が食べたいときにはここへ(C)KADOKAWA 撮影=野口 彈


観光客の多い葉山の海エリアとは対照的に地元の人の生活が中心の山エリア。ここに、相模湾のおいしい魚が味わえる和食料理店「葉山無垢」がある。魚料理が中心の料理店で、約20年和食畑で腕を磨いてきた板長が長井港から仕入れる新鮮な魚をさばいてくれる。お昼は定食(1,000円〜)や丼(1,200円〜)を中心としたしっかりとした食事が評判で、夜は種類豊富な日本酒や焼酎をはじめとしたアルコール類とともに、おつまみや宴会コースなどもそろい、さまざまな使い方ができるお店として近所の人に慕われている。

板長を務める藤本氏の父。元は自衛官だったが退職以降、料理の道に進み、和食畑で経験を積んだ(C)KADOKAWA 撮影=野口 彈


店内は板長が魚をさばく様子が間近で見られるカウンター席に加えて、お座敷席、個室にもなるテーブル席があり、木をベースにした和風の落ち着いた雰囲気。そして、このお店で楽しめる食事以外の魅力はここにある。板長の息子で店のオーナーでもある藤本嶺(りょう)氏は葉山で工務店も営む現役の建築職人。「ひのきや松などの無垢材や、珪藻土(けいそうど)など自然素材にこだわって、人にも地球にも優しい建物作りがモットーです」と語る。その藤本氏がコツコツと手作りで建てたこだわりの建物がこの「葉山無垢」だ。

カウンターにはひのきの1枚板を使用。小上がりになっている座敷席の下部には収納スペースもあり、住居建築を心得た藤本氏の技が感じられる。テーブルも手作り(C)KADOKAWA 撮影=野口 彈


カウンターや柱に使用している木や、手洗い・入口周辺の造作、床材、テーブルにいたるまで、店のすべてに藤本氏の思いがつまっている。「本業は工務店。多くの人に自然素材や日本の伝統建築の素晴らしさを知ってもらうために、どうすればいいのかを考えました。そこで、この建物を料理店にして人が集まりやすい場にすることで、食事と一緒に建築の素晴らしさも知ってもらおうと思いつきました。ここはいわば私にとっては料理店であると同時に“モデルハウス”でもあるんです。食事をしに来たお客さんは、無垢材のフローリングの気持ちよさや一枚板のカウンターの力強さと美しさなどを肌で感じることができます。私も居合わせるとついつい力説しちゃいます(笑)。そして自然素材の魅力について少しでも理解を深めて帰っていただける方がいらっしゃると、この上ない喜びを感じます」とうれしそうに笑う。

建物だけでなく、庭やアプローチなどの外溝にも藤本氏のこだわりが光る。将来、茶室を増築予定だそう(C)KADOKAWA 撮影=野口 彈


板長でもある父と、兄とともに、藤本家3人で力をあわせてお店をまわす。朝獲れの魚介や三浦野菜などのおいしい料理と一緒に、藤本氏の理念でもある「人と地球に優しい家」が体で味わえる「葉山無垢」。ぜひ一度体験してもらいたい。

海鮮丼(1,500円)には小鉢、サラダ、漬物が付く。魚は横須賀の長井港に板長自らが買い付けに行くので鮮度と質は抜群(C)KADOKAWA 撮影=野口 彈


曽祖父が手作りで建てた実家がカフェ&ギャラリーとして人々の憩いの場に


テラススペースは犬連れも可。入口には店名の由来ともなったみかんの木が植えられている(C)KADOKAWA 撮影=宮川朋久


葉山の森戸海岸から徒歩すぐの閑静な住宅街にひっそりと佇む「mikan屋」は、築100年ほどの古民家を改装し、ギャラリーを併設したアットホームなカフェに生まれ変わったもの。オーナーである戸崎美香さんはここが生まれ育った実家だ。「私の曽祖父が素人ながらに自らの手で建てた家です。成人してからいったん家を離れていましたが、祖父世代・親世代が住んでいた大切な実家なので、壊すのではなく、人が集まる場としてよみがえらせたいと思いました」と改装とカフェオープン時の思いを語る。「意外にも(笑)耐震はほとんど問題がなかったのですが、飲食店にするには保健所の審査が大変でした」。

ギャラリースペースは木のぬくもりが感じられるフローリングに。希望があればこちらでの飲食も可能(C)KADOKAWA 撮影=宮川朋久


改装は大工さんと細部にいたるまで相談を重ねながら半年をかけて行い、店内のインテリアやテーブルセットなどはほとんどが実家にあったものを有効活用している。「茶箱に蜜蝋を塗ってヤスリをかけ、テーブルとして活用しました。レジカウンターも食器棚を使っています」と言うだけあり、店内は古き良き日本の家屋風情をたたえており、雰囲気からはずれたものは一つも見当たらない。畳に座り、田舎の実家に帰ってきたような懐かしい気持ちで食事ができるのがmikan屋の最大の魅力だ。

甘酒(400円・冬限定)にシナモンをかけるのは戸崎さんのオリジナルアイディア。加藤さんの茶碗でゆっくりといただきたい(C)KADOKAWA 撮影=宮川朋久


「店をはじめたことで、昔の同級生の輪がつながるようになったり、近所の方が朝ごはんを食べにふらっと来てくれるようになりました」など、戸崎さんが思い描いていたコミュニティの場としてのmikan屋にもなっている。「特に朝ごはんが食べられるというのはこのあたりでは貴重なようで、知り合いの方にはよく来ていただいています」。朝ごはんのモーニングプレートは500円で、「通いたくなる価格が魅力」と近所でも評判を呼んでいる。

陶芸作家・加藤さんは横浜にある自宅の庭に自身の工房を構えている。葉山芸術祭にも出品予定(C)KADOKAWA 撮影=宮川朋久


また、カフェスペースの隣の部屋は陶芸作品が飾られたギャラリースペースだ。「友人でもある陶芸作家の加藤さんに、オープンの時からお世話になっています。シンプルな素材を使用し、土のあたたかみが感じられる加藤さんの作品は日常使いにぴったりで、私の料理のコンセプトと同じだったこともあり、作品を展示・販売していただいています。お店でだす甘酒の器は加藤さんの作品でもあります」。作家でもある加藤さんがギャラリースペースの運営をしてくれていることもあり、並べられた作品はどれもmikan屋の内装にすっと馴染む素朴で良質なものばかり。

ランチの名物は「チキンストロガノフ」(700円)。一人でキッチンもまかなう戸崎さんの優しい手作りの味がくせになる(C)KADOKAWA 撮影=宮川朋久


「ギャラリーの併設だけでなく、レンタルスペースとしても地域の方に活用していただいています。畳でのヨガ教室や、テラススペースでのドッグマッサージなども不定期で開催しています」。100年前に家族のために建てられた家が、今は人が集まるコミュニティの場として着実に地域の役に立つ存在となっている。“お店も店主の人柄も、素朴だけど芯がある存在”という言葉がぴったりのmikan屋では誰もがまったりとくつろげること間違いない。

【取材・文/鈴木秋穂、撮影/野口 彈、宮川朋久】

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