32歳でヴィジュアル系バンドマンから営業マンに転身。挫折からのキャリアチェンジについて聞いてみた「バンド活動が今の仕事にも活きている」

東京ウォーカー(全国版)

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“ヴィジュアル系インサイドセールス”の肩書きで活躍しているMIHIROさん。ヴィジュアル系バンドのギタリストとしてデビューし、約13年の活動の末に引退。現在はビジネスマンに転身し、過去の経験を武器に、株式会社ホットリンクでインサイドセールス(非対面で行う営業活動)として活躍中。そんな異色の経歴が、SNSを中心に話題となっている。

今回はMIHIROさんにインタビューし、彼の波瀾万丈な人生を前編後編に分けてお届けする。後編では、バンドマン引退後、ビジネスマンとして活動する彼の半生をご紹介。挫折をしてもなお新たな道を切り開くMIHIROさんに、セカンドキャリアの築き方を教えてもらった。

お仕事中のMIHIROさん

ヴィジュアル系バンド「シリアル⇔NUMBER」在籍時のMIHIROさん

ヴィジュアル系バンドでギタリストとして活躍していたMIHIROさん


デビュー後の心の葛藤「僕は選ばれし者ではない…」

――華々しくデビューされた後、理想と現実のようなギャップを感じることはありましたか?

「もともと高校時代のいじめの体験から『自分の正義を証明したい』と思いバンドマンを志しましたが、芸能界で売れる人って一握りなので、人気バンドという限られた椅子へ座るために手段を選ばない人が多いんです。ステージ上は華やかですが、裏側では潰し合いが行われている。憧れていた世界に入ったものの、そこは僕が大嫌いだったいじめや欺き合いが起こっているところでした。憧れだったバンドマンと共演する機会もありましたが、アーティストとしてはすごくかっこよくても、裏側は人間としてどうかしているなと感じる場合も多くて。そして僕も『自分の正義を証明したい』などと生ぬるいことを言っていたら生き残れないなと感じるたび、『僕の願いは叶えられないんだ』と悩んでいました」

――師事したMIYAVIさんの言葉を胸に活動されるなか、気持ちが折れそうになったことはありましたか?

「はい。実は、僕たちは有名バンドのローディー経験者が集まっていたことから、デビュー直後から順調なスタートを切っていたんです。でも人気を継続するのが難しくて。新しく登場したバンドに追い抜かれライブ動員数は低下し、人気がゆるやかに下降していきました。同期が武道館ライブを開催する傍ら、僕らは小さなライブハウスで。ライバルとの状況を比べては落ち込み『なぜほかのバンドに勝てないんだ…』と悩み苦しむ日々でした。なかなか認められませんでしたが『僕って売れる一握りのバンドマンになる選ばれし者ではないのかも…』と20代後半頃から感じ始めていました。諦める気持ちとまだやれるという両方の気持ちに、ずっと揺さぶられていました」

――引退という選択肢が見えてきたきっかけは何かありましたか?

「はい。いくつかのバンドを結成し解散を繰り返してきましたが、『このバンドを人生最後にして、絶対に売れる!』という意気込みで活動していました。しかし、メンバーとの価値観のズレが徐々に広がっていったんです。メンバーはいい音楽は作るけど、音楽以外に興味がなく『いい音楽を作っていればいつか売れるから』と信じてやまなかったんです。僕は『いい音楽を作るバンドはたくさんいて、そこから売れるためのプロモーションを考えないと』と訴え、さまざまなアイデアを出していたのですがメンバーには響かずで。音楽のレベルは高いバンドだったのですが『このままじゃ売れない』と悶々としていました」

――当時のメンバーとMIHIROさんの考えが違ったんですね。

「それからアルバイトをしないと生きていけない状況に追い込まれ、電話営業のアルバイトを始めたんです。そこで『バンドのために短時間で稼ぐぞ!』と気合を入れて働いていたら、電話営業の成績が結構良かったんです。入って2カ月目から成績上位で、1位を獲得したこともありました。そこで社員の方から『社員にならないか?』と誘っていただいたんです」

――短期間で1位になるなんてすごいですね。

「そのアルバイト先にいた営業部長が元バンドマンで、当時僕が抱えていたバンド活動の悩みを相談したんです。そこで言われた言葉が引退の決め手になりました」

――どんな言葉を言われたのでしょうか?

「『バンドの世界は1回そこそこ売れた奴ほど抜けられなくなるんだよ。ライブハウスではスターだし、めちゃくちゃ楽しいじゃん。ただ食べ続けられる奴って本当に突き抜けた一握りだけだし、突き抜けられる奴はもっと早くにそうなってるよ』と言われたんです。確かに僕の同期で突き抜けている人たちも20代半ばで圧倒的に人気がありました。当時僕は31歳だったので『確かにそうだな…』と理解するものの、どうしても認められなかったんです。というのも、約13年間音楽だけをやってきて、高校生の頃に『世界を変えてやりたい』『自分が間違っていないことを証明したい』とギターを手に取り、『音楽を辞めたら死のう』と命を懸けるほどの覚悟をして始めたことなので、なかなか認められなかったんです」

――辞める選択をするにも覚悟が必要だったんですね。

「でもその上司が『お前は音楽の世界じゃなくても活躍できると思うよ。だってこの営業成績が物語ってるじゃん。お前はやれる人間だと思うから、もし音楽以外の道を選択するなら、一緒に働こうよ』って言ってくれたんです。依然バンドの状況は変わらず、バンドのメンバーたちは売れるよりもやりたいことをやりたい人たちということがよく分かりました。その考えが悪いとは言いませんが、絶対に売れたかった僕とは考え方が合わず『このバンドは僕の続けるものではない』とバンドを引退し、アルバイト先で社員として就職しました」

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