「半漁半X」という働き方、“釣りを複業にできる町”を目指す西伊豆の取り組みが地域水産業を救う?

東京ウォーカー(全国版)

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「釣りを複業にできる町」をひとつのゴールとして、静岡県の西伊豆町に釣り人(=ANGLER)の関係人口を増やすプロジェクト「西伊豆 & ANGLER」。一般社団法人フィッシャーマン・ジャパンと西伊豆町、株式会社ピラミッドフィルムクアドラが2023年7月4日よりスタートさせた「西伊豆 & ANGLER」とはどのような取り組みなのだろうか。プロジェクトの狙いやメリットなどについて、担当者に話を聞いた。

釣りを複業にできる関係人口創出プロジェクト「西伊豆 & ANGLER」


新プロジェクト「& ANGLER」とは


「& ANGLER」とは、漁業の担い手不足に悩む地域とANGLER(アングラー=釣り人)をつなぎ、関係人口の創出や釣りを複業にした移住を促進するプロジェクト。これまでほとんど交流のなかった、海を訪れる釣り人たちと漁師をはじめとする地元民のコミュニケーション円滑化や、地域水産業の活性化を目指すもの。

プロジェクトの第一弾として、黒潮の恵みによる豊かな漁場をもつ西伊豆町とのコラボが実現した。

ほかにも仕事を持ちながら週に数回のみ漁を行う「半漁半X」という働き方


「& ANGLER」プロジェクトの狙い

プロジェクトの狙いについて、フィッシャーマン・ジャパンの担当者は次のように語る。

「西伊豆をはじめ、日本全国の一部の漁村では漁師や水産業関係者が減り続け、本来の漁村としての機能や生業を維持できなくなっています。私たちフィッシャーマン・ジャパンは、漁師だけでなく水産業に深く関係する人々を『フィッシャーマン』と呼び、こうしたフィッシャーマンを全国に増やすことで水産業や地域の活性化を目指してきました」

「西伊豆は、いわゆる普通の漁師が減りすぎてしまい、これから新規就漁して漁師という仕事だけで生活していくのは困難なため、役場関係者や漁協関係者と協議し、町外の釣り人たちとともに『釣りを複業にできる町』を目指すことにしました。これによって漁師不足による漁獲量低下の解消や、多様な人材が訪れることによる漁村の活性化を図ります」

「ターゲットは、ほかにも仕事を持ちながら週に数回のみ漁を行う『半漁半X』という働き方を目指す人です。性別や年齢は関係なく、海や魚、釣りを愛している人であれば、西伊豆町という『人を受け入れる力』を持った町で活躍できると思っています」

これまでに全国で180名以上の新規漁業者を誕生させた実績があるフィッシャーマン・ジャパン。彼らの手がける「& ANGLER」が見据えるターゲットは、漁業に興味はあるけど、いきなり漁師を専業にすることや、地域への移住はハードルが高いという思いを持つ層。

まずは「釣り人関係人口」として地域へ関わってもらい、そこから多拠点や移住などの選択肢を経て、新たなフィッシャーマンの形である「釣り人漁師(※)」を生みだす。そして水産業の担い手を増やし、育てたいと考えている。
※漁業権を取得する場合は、漁村へ移住し、その浜の信頼を得て、地域の漁協の組合員になる必要がある

新たなフィッシャーマンの形である「釣り人漁師」を生みだす


「半漁半X」という働き方

釣り人漁師が推進する「半漁半X」という働き方について、担当者は「もともと漁村(特に島など)では、漁業と農業をやっている人なども多いため、ある意味、昔に戻るという言い方もできるかもしれません」と語る。

また、「半漁半X」の「X」についてどんな職業の人がいるのか尋ねると、「最近の新しい働き方でいえば、西伊豆では行政職員、直売所店員がいますし、隣町には宿泊施設経営者が漁業権をもっているパターンもあります。今はやめてしまいましたが、ホテルマン漁師もいました。宮古島にはシェフ兼漁師もいます。経営者兼漁師兼猟師もいます」と教えてくれた。

西伊豆町でのさまざまな取り組み、町役場も全面協力

もともと半漁半X人材の事例がいくつかあったという西伊豆町。だが、プロジェクト実現に向けては、「事例があるとはいえ、よそ者を漁師にするという合意形成や覚悟を地域全体でしていくのは大変なことですので、西伊豆町役場を中心に、地域の漁業者や漁協関係者に丁寧に説明をし、協議を重ねながら進めてきました」と担当者は明かす。

そうして実現したプロジェクトでは、「西伊豆 & ANGLER」のWebサイトを立ち上げ、町の魅力や移住した釣り人へのインタビュー(ANGLER'S VOICE)を紹介したり、釣りや地元の人々との交流を楽しめる体験ツアー(ANGLER'S TOUR)も実施したりしている。

ANGLER'S TOURでは、西伊豆の豊かな海での釣りを楽しめる

ツアー参加などで関心を深めた釣り人に対しては、町役場が住宅探しなど本格的な移住支援に乗り出す。移住後の定着にいたるまで、プロジェクトのコーディネーターが町と連携をとりながら継続的に支援を行う。

ANGLER'S VOICEでは、釣り好きが高じてほかの地域から西伊豆へ移住した人々を紹介

移住したご夫婦のインタビューも

水平線に沈む夕陽の美しさでも知られる西伊豆町は、釣り人が提携船で釣った魚を電子地域通貨「サンセットコイン」で買い取る仕組み「ツッテ西伊豆」など独自の取り組みを進めており、「釣り人にやさしい町」として全国的に注目を集めつつある。

ANGLER'S TOURでユニークな日常を体験


また、西伊豆町では県外から移住した釣り人に対して漁業権を与えた例もある。コロナ禍を経てリモートワークが広がり、複業や二拠点生活(デュアルライフ)も一般化してきた今、趣味の釣りを「複業」にできる環境が同町には整いつつある。

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