まだまだ輝ける“第2の人生”。シニアパートナーがスターバックスで見つけた自分の居場所
東京ウォーカー(全国版)
67歳で輝くバリスタ大井さんの心あたたまる仕事術
続いて、話をうかがったのは、以前、キリンビールで営業職をしていた大井さん。退職後の現在は、スターバックス コーヒー 大田原美原店でバリスタとして、カウンター内で絶え間なく作業をこなしている。前職で顧客とのコミュニケーションを大切にしてきた経験が、ここでの成功に繋がっている。

彼女がスターバックスでの社会復帰を決意したのは、友人と車で訪れた西那須野店の「あたたかい雰囲気」と「親しみやすさ」に感動したから。あの店舗の雰囲気が、心に深く刻まれた。それが、彼女にとっての転機となり、新しい挑戦への一歩を踏み出す原動力となったのだ。
大井さんの仕事に対する情熱と挑戦、学びの実践
スターバックスでの勤務は、大井さんにとって単なる仕事以上の意味を持っている。「たくさんの良いことがあり、一つひとつ積み重ねていけることが特に喜びです」と、ここで働いてよかったことを教えてくれた。その言葉からも、日々の業務を通じて自分自身がどのように成長しているかが伝わってくる。
大井さんも足立原さんのように入店当初は「カフェアテンダント制度」を利用。しかし、次第にバリスタとしてのスキルを磨き始め、カウンターでお客様にコーヒーを提供するようになった。CSからバリスタへのステップアップのきっかけについて、大井さんは「私は朝が得意だったので、急にシフトに入れなくなったパートナーの代わりができると、バリスタに挑戦したいと思いました。そうすれば、もっと店舗の役に立てると感じたからです」と当時の心境を語る。そして、周りの人たちが『やってみたら?』と背中を押してくたことが、挑戦する大きなきっかけに。「前の店長さんやマネージャーたちが、私を大事にしてくれ、自信を持てるように育ててくれた」と振り返る。周囲のサポートと励ましも、大井さんの成長を支えているのだ。

「お客様ファーストを意識することで、些細なことが気にならなくなります」と、スターバックスでの経験から得た学びを明かす。他のパートナーがクレームを受けたとき、その影響でパートナー同士の雰囲気が悪くなったことがあったそう。そのときに、「目線をお客様に向けると、全てが気にならなくなる」と気づいたそうだ。お客様の笑顔や挨拶に集中することで、自分の感情よりもお客様へのサービスが最優先であると学んだ。その結果、仕事への取り組み方が大きく変わったのだ。
そして、忘れられない失敗エピソードも。
「あるとき、『これは甘いものですか?』と聞かれ、『甘くないです』と答えたところ、後で『甘かった』とのお電話がありました。お客様の味覚は異なるので、自分の感覚だけで答えないようにしようと感じました。お客様のニーズに応える大切さを日々学んでいます」
この経験を通じて、よりお客様に寄り添ったサービスを心がけるようになったとのことだ。失敗から学び、それを次に生かす姿勢が、周りからの信用につながっている。
自分自身の意識と自己管理が大切
シニア世代のライフスタイルが、ひと昔前と比べは大きく変わってきた現代。スターバックスでの67歳になる自身の働き方について、「自分で体力を維持しながら頑張っている感じです。『頑張りな私』と自分を励まし、周囲に迷惑をかけないようにしています」と大井さん。このように、自分自身の意識と自己管理が大切だと実感しているそうだ。
さらに、お客様の名前や細かい情報や気付きを記録するために、ミニノートを活用している。スターバックスで働き始めて約5年。そのノートも3冊に。「お客様一人ひとりのことを大事にするために、常にメモを取り、情報を大切にしています」と話す。こうした細部にわたる配慮も、信頼されるバリスタとしての地位を築く要因だ。このように、彼女は顧客のニーズに応えるスキルを日々磨き続けている。
あたたかいつながりがもたらす大井さんの顧客との絆
大井さんが大切にしているのはお客様との交流。「あるお客様が、『彼氏と来たときに、すごいコメントをもらい嬉しかった』と話してくれたことがあります。自分はそのコメントを覚えていなくても、お客様が覚えていてくれるのは嬉しいです」と語る。 さらに、「また別のお客様から『あなたを見て、自分も頑張ろうと思った』と言われたこともあるんですよ。特に元気がない時に、『こんなに頑張っている人がいるから、自分も頑張ろう』と言われたことも、自分の力になっています」と、このような励ましの言葉は、モチベーションを高める大きな要素になるそうだ。

こうして、大井さんは交友関係を広げ、今では店舗でのつながりをきっかけに、お客様との良好な関係を築いている。「スーパーなどで『今帰り?』とか『またお店に行くね』と、声をかけられることが増えました。自分が接したお客さまとの関係が、仕事以外の場面でも続いていることが嬉しいです」と話す。彼女のあたたかい人柄と真摯な対応が、多くの人々との良好な関係を築くきっかけとなっているのだ。
世代を超えた、友だち感覚のフラットなコミュニケーション
孫よりも年の離れたパートナーとのコミュニケーションについて、大井さんはこう話す。「この年代になると、体は少しくたびれてきますが、気持ちは全然変わらない」とのことだ。「世代が違っても、孫世代でも子どもの世代でも、同じように接しています」と語り、世代を超えたコミュニケーションを大切にしている様子が伝わる。パートナーたちから「ゆきちゃんみたいに年取りたい」と言われることがあり、その友だち感覚や親、おばあちゃん感覚での接し方のおかげで、多くの人々との良好な関係を築けている。

同世代や高齢のお客様への配慮についても、大井さんは「初めて来店される高齢の方には、『私も最初は分からなかったから大丈夫ですよ』と声をかけ、気持ちに寄り添っています」と語る。初めてのお客様が安心して店舗に来店できるよう、大井さんは常に心を配っている。このような気配りが、スターバックスでのサービスに深みを加えている。
「スターバックスで働くことで、自分に自信を持てるようになり、家族にも胸を張れるようになりました」と語る大井さん。その経験が、自分自身の成長にどれほどつながっているかがよくわかる。「ドライブスルーでのやり取りは、長く顔を合わせるわけではありませんが、お客様との瞬間が一番楽しいです」と話す彼女の言葉から、仕事に対する深い愛情と喜びが感じられた。
パートナーとして新たなキャリアを歩み始めた足立原さんと、大井さん。彼女たちがスターバックスで築いてきたものは、単なる仕事以上の価値を持っている。孫の一言から始まった足立原さんの挑戦は、静かな生活に変化をもたらし、新たな生きがいを見つけるきっかけとなった。大井さんは、これまでの経験を活かしながら、新たなスキルを習得し、バリスタとしてさらなる成長を遂げている。
現状に満足せずに、前向きで、楽しみながら成長を続ける2人の挑戦と成長は、店舗のパートナーやお客様にとっても励みとなり、スターバックスの大切にしている価値観そのもの。これからも、彼女たちはその笑顔で、多くの人々に元気と感動を届け続けるだろう。
●足立原さん
大船ルミネウィング店
2018年11月から勤務
【足立原さんのおすすめペアリング】
「スマトラ」と「あんバターサンド」
「あんバターサンドは、特に年配の方におすすめです。 あんこが好きな方だったら、気にいると思います」
●大井さん
大田原美原店
2019年9月から西那須野店で勤務。同年12月に大田原美原店の開店に合わせ転籍
【大井さんのおすすめペアリング】
「カフェ ベロナ」と「チョコレートチャンクスコーン」
「すごくシンプルなペアリングですが、コーヒーってこうやって楽しむんだなと思いました。いろいろな人に伝えています」
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