人気のリカバリーウェアはなぜ生まれた?シリーズ累計販売数210万枚を突破、業界先駆者の「ベネクス」に躍進の理由を聞く
東京ウォーカー(全国版)
長時間の労働、仕事量、人間関係、睡眠不足…これらのストレスが原因で、慢性的な疲労を抱えているという人は少なくないだろう。そんな人たちに向けた着用して休むことで疲労回復をサポートしてくれる「リカバリーウェア」が市場を拡大している。
「リカバリーウェア」を最初に世に放ったのがVENEX(ベネクス)。2010年から販売をスタートし、シリーズ累計販売数は210万枚を突破。アスリートや著名人の愛用者も多数いる。ベネクスはなぜ、「リカバリーウェア」という新しいジャンルの商品を作り出せたのか?株式会社ベネクスの代表取締役 中村太一さんに話を聞いた。

床ずれ防止用マットは売れず。ピンチからの大逆転劇
中村さんがベネクスを立ち上げたのは2005年。大学卒業後コンサルティング会社に勤めたのちの起業だった。
「高校2年生のとき、ラグビーの試合で脳内出血を起こす怪我をして生死をさまよったんです。これがきっかけで『やれること、やりたいことを全力でやる』という志が生まれました。3年後には起業をすることを目標に、コンサルタント会社に勤め、そこで介護業界のことを知り、ビジネスチャンスがあると考えました。寝たきりの方の多くの悩みは“床ずれ(褥瘡 じょくそう)”です。同じ姿勢で寝ていることで、体とマットの接触部分で血行不良が起きて内出血や水ぶくれができ、ひどいときは壊死してしまいます。ベネクスを立ち上げたとき、この床ずれを解消する介護用マットの開発に着手しました」
床ずれを防止するための手法として、血流を阻害しないよう体圧を分散させるマットを考案。しかし、「高齢者、しかも寝たきりの方は血流が悪いので体圧の分散だけでは問題の根本的解決につながらなかった」のだそう。
血流自体を改善する必要がある。そこで注目したのが遠赤外線を出すプラチナをはじめとする鉱物素材だった。当時、材料を100ナノメートル以下の細かい粒子にした“ナノ素材”が注目を集めた時期でもあり、プラチナなどの鉱物をナノ素材にし、それをさらに繊維に活用できればいいと考えた。全く新しいアイデアだったため、素材をナノ化し、血流改善に最適な特殊素材を開発することも、その特殊素材を繊維にすることも協力会社を得るのに苦労したが、2007年に商品開発までこぎつけた。

「特殊素材『DPV576』はプラチナをベースにし、複数の鉱物を組み合わせることで血流改善に最適な遠赤外線を発してくれます。これをPHT繊維にするにあたっては、リラックスには肌触りが非常に大事だと考えたので、0.016ミリメートル、髪の毛の5分の1の細さに仕上げました。作り上げたPHT繊維を使用したリカバリーウェアの開発においては、体温変化、血流量の測定などを行い、エビデンス取得にも注力しています」
こうして、苦労の末に床ずれ防止用マットができあがったが、なんと全く売れなかった。「10万円で販売しようとしたんですが、『物はいいけど高い』と購入を見送りにされてしまいました」と中村さん。
では、どうやってリカバリーウェアは誕生したのだろうか?

「布を開発するとけっこうな量を作ることになるので、布が余ります。そこで、介護士向けにケアを目的としたウェアを作ったんです。介護士の仕事はハードなので、体調を崩されてしまったり、離職率が高かったりといった問題がありました。そうした方々のサポートになればいいな、ということで参考出品として『ケアウェア』の名前で介護業界の展示会に出したんです。そうしたら、大手フィットネスクラブチェーンのゴールドジムのバイヤーさんが『スポーツのリカバリーに最適だ』と注目してくださいました。当時、“リカバリー”という言葉は一般的ではなく、私たちも『リカバリーって?』という状態だったんですが、その方から『激しい運動によって生じた疲労状態から元の状態に戻すためのプロセス』だと教えていただきました。予想外のところから引き合いが来ましたが、そこからは口コミでどんどん評判が広がっていきましたね。都内の有名百貨店のバイヤーさんが、メンズ館のゴルフ売り場にリカバリーウェアを置いてくださったのですが、顧客に経営者の方が多く、皆さん普段からお疲れだったので、リカバリーウェアをゴルフ着としてではなく、休養のために着てくださり、その口コミが広がる。いい流れができて、どんどん広まっていきました」
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