スターバックスのコーヒーかすリサイクル。有機農業で地域循環
東京ウォーカー(全国版)

畑や田んぼが広がり、のどかな雰囲気が漂う千葉県流山市の郊外。5月のある日、畑の一角には、地域にあるスターバックスの店舗のパートナー(従業員)たちが農園の人たちとともに汗を流して農作業を行う姿が。ここでは、スターバックスで出る抽出後のコーヒーのかすを、畑の雑草を抑制する資材として使用しているという。その取り組みを取材した。
1粒で2度おいしい、コーヒーかすの可能性
さつまいもの苗が植えられた畑を、両手にビニール袋を持って働く農園の人やパートナーたち。このビニール袋1袋には、店舗から回収された約10キログラムのコーヒーかすが入っている。畝間(うねま・畝と畝の間)に等間隔に並べ、袋を破ってコーヒーかすをまき、畑の土にすき込むのがこの日の作業だ。
「畝間にまくと、雑草の抑制になるんですよ」と話すのは、「えか自然農場」農場長の藤後省二さん。えか自然農場は、東京ドーム3個分にも相当する広さの農園をもち、農薬や化学肥料を一切使わずに年間約50種類の野菜を栽培。地球環境に優しい循環型農業を実践する有機農場だ。ここでは、2年ほど前から、雑草の抑制のためにスターバックスから出るコーヒーかすを活用している。

有機農業は農薬をいっさい使わないので、雑草管理は作業の中でも特に手間のかかるもの。
「2週間に1回、夏場ならもっとこまめに手作業や機械で除草しないといけない。でも、コーヒーかすをまくと、1回まいたら、そのあとしばらくは何もしなくていいんですよ。しかも、すき込んで放っておくと、畑の肥やしになるんです。私たちは“1粒で2度おいしい”って言っています」
科学的根拠はまだ検証段階だそうだが、えか自然農場の代表取締役・小野内裕治さんによると、コーヒーかすが多孔質であることから、その無数の穴がバクテリアの住処になって時間の経過とともにコーヒーかすに含まれる物質が分解され、住み着いたバクテリアが生み出す有機物質が作物の栄養素になっているのではないかと考えているそうだ。
「世界各地で栽培されたコーヒー豆が、コーヒーとして楽しまれ、最後はここ流山で大地にかえり、新しい命を育む礎になる。ロマンチックで壮大なコーヒー豆の旅ですよね。それ想うと、感謝の気持ちでいっぱいです」と藤後さんは目を細める。
しかし除草する手間がかからないといっても、コーヒーかすをまくのは、なかなかの重労働だ。この日、約1200平方メートルの畑に運び込んだコーヒーかすは約1.8トン。




等間隔に置いたビニール袋を破ってコーヒーかすをまくと、ミニ耕運機が登場。藤後さんが「小川さーん、出番だよー!」と、スターバックス コーヒー 野田桜の里店のストアマネージャー(店長)・小川さんを呼ぶと、小川さんは慣れた手つきで耕運機を操作していく。

耕運機が通れない細い畝間は、レーキを使っての手作業。参加したほかのパートナーとディストリクトマネージャー(地区担当マネージャー)の君嶋さんも、額に汗をにじませながら、一所懸命に働いている。

参加者は皆、コーヒーかすをまく手伝いは2回目。それ以外にも家族で芋堀りに訪れるなど、えか自然農場との交流を続けているそうで、「袋をこう破ったほうが早くできるよ」「レーキって難しいね」「このコーヒーかすのかたまり、エスプレッソかも!」と打ち解けたようすで作業は進み、2時間ほどで終了した。
地域で循環する自然の恵み
小野内さんは、「我々は有機農業を日本中に普及させるのがミッション。情報を発信して、地球環境を守っていきたい。でも、雑草管理は有機農業を始める大きな壁になる。コーヒーかすが雑草抑えになり肥料になると、その問題解決に向けて大きく前進する。それはとてもすごいことで、有機農法を広げる起爆剤になるのではと思います」と、コーヒーかすが持つ力に期待を寄せる。

そもそもこのコーヒーかすの活用方法は、えか自然農場が“コーヒーかすを発酵させて土にまいたら肥料にならないか”という実験をしたのが発端だったそうだ。その実験は野菜が育たず、あえなく失敗。ところが「野菜が育たないのなら、草も育たないんじゃないかなって考えたんです。そこで、畝間にまいて実験してみたら、本当に草が生えてこなかったんですよ」と藤後さん。まさに、逆転の発想だ。

そしてそこから、コーヒーかすを提供してくれる企業探しが始まった。
「手当たり次第にいろいろなカフェチェーンや卸売業者などに打診した中で、前向きな返答をくれたのが、スターバックスだったのです」
現在、週に3回、えか自然農場は近隣のスターバックス3店舗からコーヒーかすを回収。育った野菜は地域のスーパーマーケットやコンビニエンスストアなどで販売している。コーヒーかすが地域の農園の資源となり、生産された食物が地域で消費されるという地域循環のサイクルができているのだ。
リサイクル資源として農園にコーヒーかすを提供するには、店舗での適切な分別が重要になる。「専用の機械を使ってコーヒーかすの水切りをするのですが、1グラムでも多く農園に届けたいので、余分なものが入らないように、注意を払って行っています」と小川さん。
「一緒に農作業をしたり、近所でその野菜が売っていたり、自然の恵みに感謝するということにもつながる。地域循環を身近に実感できる、とてもいいモデルだと思います」
そしてディストリクトマネージャーの君嶋さんは、この取り組みを通じて、コミュニティを活性化させたいと考えている。
「えか自然農場の“未来をよくしたい”、そして“地域循環”という考えに共感しました。流山は子育て世代がメインなので、例えば店舗で食育のイベントをする、商業施設にも店舗があるのでデベロッパーさんとやれることもあるかもしれません。第三者もどんどん巻き込んで、活動の輪を広げ、深めていきたいです。将来的には、えか自然農場で育てた野菜を、スターバックスのペストリーに使用にできたら、と夢を描いています」

国内のスターバックスでは、1店舗あたり1日約11キロ排出されるコーヒーかすを有効活用するため、2014年からコーヒーかすのリサイクルに取り組んでいる。コーヒーかすを加工して畑のたい肥や牛の飼料にし、育てられた食物がフードやドリンクとなってお店に戻ってくる仕組みや、酪農家への提供のほか、この流山地区のように各店舗が地域とともにさまざまな方法でリサイクルに取り組んでいる。その輪は広がり、6月にはリサイクルに取り組む店舗が全国の半数にあたる約1000店舗に拡大する見込みだ。
限りある資源を大切に、地球に優しい活動をそれぞれの地域から。コーヒー豆のポジティブな活動はこれからも広がっていく。
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