しょうゆの“当たり前”を変えた!キッコーマンの人気商品「しぼりたて生しょうゆ」の誕生と進化の物語とは

東京ウォーカー(全国版)

X(旧Twitter)で
シェア
Facebookで
シェア

2010年の発売以来、好評を博しているキッコーマンの「いつでも新鮮 しぼりたて生しょうゆ」。「密封容器」「生しょうゆ」という2点を要に開発され、しょうゆナンバー1ブランド(※1)にまで成長した商品だ。
※1:インテージ新SCI しょうゆ市場 2024年4月~2025年3月 累計購買金額

誕生から2025年2月のリニューアルにいたるまでの歩みを、キッコーマン食品株式会社 プロダクト・マネジャー室のしょうゆ・みりんグループで商品開発を担当する恩田友貴さんに聞いた。

商品開発担当の恩田友貴さん


そもそも「しぼりたて生しょうゆ」って、どんな商品?

キッコーマン いつでも新鮮 しぼりたて生しょうゆ

「しぼりたて生しょうゆ」は、“ダブルフレッシュ”をキーコンセプトに開発された商品。“フレッシュ”のひとつは空気に触れない密封容器による鮮度保持、もうひとつは火入れをしない「生しょうゆ」自体が持つフレッシュな風味を指す。

一般的に、しょうゆは空気に触れると酸化して色が黒くなり、香りも変化してしまう。「しぼりたて生しょうゆ」は、ボトルの内袋にしょうゆを詰めた二重構造としたことで、しょうゆが空気に触れず、200ミリリットルで90日、450ミリリットル以上で120日(※2)もの間、常温で鮮度を保つことができる。
※2:一部商品では開栓後に常温で鮮度を保つ期間が異なる

また「生しょうゆ」は、通常のしょうゆつくりのなかで行われる「火入れ」を行わず、特殊なフィルターで微生物などを除去する製法でつくられる。これにより、澄んだ色、まろやかな塩味、おだやかな香りを楽しむことができる。そんな「生しょうゆ」ならではのフレッシュな風味は、空気に触れると失われてしまうため、鮮度を保つには空気に触れない密封容器の開発が不可欠だった。

「キッコーマン いつでも新鮮 しぼりたて生しょうゆ」のパッケージ構造


容器開発の期間は10年以上、試作品は数えきれないほど

実はキッコーマンでは、「しぼりたて生しょうゆ」発売のはるか以前から、「傾いてもしょうゆがこぼれない容器を」「開栓後にしょうゆが黒くなるのをなんとかしたい」と、容器について社内で議論し、開発に着手していた。しかし、容器開発は順風満帆とはいかず、試行錯誤を繰り返し、10年以上の歳月を要することに…。

そんな長い開発期間を経て完成したのが、「しぼりたて生しょうゆ」に採用されたパウチタイプの密封容器だ。ただ、パウチタイプでは中身が減ると自立しないことや、「料理中に両手を使わずキャップを開けたい」といった声も多かったことから、現在のようなボトルタイプの開発に着手した。

当初発売された500ミリリットル入りのパウチタイプ


容器メーカーとやり取りを重ねながらボトルタイプを開発し、なんと10カ月で商品化を実現。しょうゆのリニューアルスパンとしては非常に短く、この期間中に製造体制の構築や容器変更の告知、取引先への説明などを行うのは、これまでにない短期決戦だった。

ちなみに、密封ボトル入りのしょうゆを初めて発売したのはキッコーマンだ。この密封ボトルは開栓後も常温で鮮度を保つだけでなく、押す力の加減により1滴単位で好きな分量を出せるという優れもの。これまで存在しなかったものを、驚きのスピードで世に送り出した。さまざまな面で、しょうゆの“当たり前”を変えた商品だ。

最初に発売した200ミリリットルの密封ボトルは、キッコーマンしょうゆの象徴でもある赤いキャップが特徴の「卓上びん」を踏襲したデザインに。現在の主流である450ミリリットルタイプは、誰でも持ちやすいよう容器を持ったときのフィット感のほか、テーブルの上に置いたときに子どもの視界を邪魔しない大きさなどにこだわっている。当時の開発者いわく、ボトルを押したときにしょうゆが出る量の調節など、数え切れないほどの試作を繰り返したという。

気づいていない不満を引き出すことから始まった「生しょうゆ」への取り組み

もともとしょうゆは不満が出にくい商品だ。あって当たり前の空気のような存在で、ユーザーにヒアリングしても不満や改善すべき点はなかなか出てこない。

「しぼりたて生しょうゆ」の開発当時も同様だったが、それでもユーザーへの調査を重ねていくうちに、求められている味が変化していることに気づいたという。しょうゆに限らず、「旨みのある味」や「まろやかな味」を好むようになり、一方で「塩辛い味」や「濃い味」を敬遠するように変化していた。そこで着目したのが、「生しょうゆ」だった。

実は1966年にキッコーマンから生しょうゆが販売されたことがある。社員も生しょうゆがおいしいことは知っていたが、どうしても鮮度を保つのが難しく、また当時は現代と嗜好(しこう)も異なっていたからか、それほど普及することなく販売をやめた経緯があった。

そこから年月が経ち、ようやく生しょうゆの鮮度を保てる容器を開発。「しぼりたて生しょうゆ」が発売された。それだけ、この容器の誕生は本当に画期的だった。

昔から工場や社内でも生しょうゆの味は好評で、ユーザーの味の嗜好の変化にもマッチするものと思われていたという。そのため、おいしさを維持できる容器さえあればユーザーの評価を得られる、という自信はあった。

「私は当時、営業として携わっていたのですが、お客様やお得意様に対して新たな提案ができると、モチベーションは非常に高まっていました。社内には反対意見などもなく、一丸となって取り組んだ商品です」と恩田さん。

現在の商品開発風景


また、ユーザーの潜在的な悩みを捉えるにはプロセスが重要だと恩田さんは話してくれた。

「アンケートなどの定量調査ではお客様の求めるものはなかなか見えてこないので、とにかく会話をしていきます。しょうゆというプロダクトについてだけでなく、料理や生活におけるお悩みも深く聞くことで、商品開発のヒントが見えてくるもの。そのヒントをアイデアに変え、『こんなお悩みはないですか?』『そんなとき、こんなものがあったらどうですか?』と提案すると、『今まで気づかなかったけど、言われてみれば確かにそれはいい!』といった形で評価してくださいます。そのため、我々のチームでは外部のインタビュアーに任せず、自分自身でお客様とたくさん会話をすることを大切にしているんです」

新たなコンセプトとおいしさで人気を博し、しょうゆコーナーを白く塗り替えることに

新しいコンセプトの商品が出にくいしょうゆカテゴリーにおいて、新たに登場した「しぼりたて生しょうゆ」は大きなトピックスになった。発売当初から高く評価され、多くの店頭に並び、販売も好調。一時的に十分な量を供給できない時期もあったほどだ。

パッケージにもこだわり、目指したのは“食卓にあっても違和感がなく、インテリアと調和するもの”。事前調査でも高評価だった白基調のデザインは店頭でも好評で、それまで真っ黒だったしょうゆ売り場に白いボトルが並ぶことで、売り場が明るくなるという効果もあったそうだ。

もちろん、味についての評価も高かった。例えば、試食したある企業のバイヤーは、「今日、このしょうゆを持って帰って家族に食べさせたい。そのくらいおいしい」と評価。売り場導入がすぐに決まったこともあるという。密封ボトルを発売したあとには、ユーザー調査での再購入意向が9割を超えるほどだった。

現在、「しぼりたて生しょうゆ」は長年主力商品として販売されてきた「こいくちしょうゆ」「特選 丸大豆しょうゆ」を上回り、キッコーマンのしょうゆ製品のなかで最も高い認知率を誇っている。

  1. 1
  2. 2

この記事の画像一覧(全7枚)

キーワード

テーマWalker

テーマ別特集をチェック

季節特集

季節を感じる人気のスポットやイベントを紹介

花火特集

花火特集2025

全国約900件の花火大会を掲載。2025年の開催日、中止・延期情報や人気ランキングなどをお届け!

CHECK!2025年全国で開催予定の花火大会

おうちで金麦花火セット

夏休み特集2025

夏休み特集 2025

ウォーカー編集部がおすすめする、この夏の楽しみ方を紹介。夏休みイベント&おでかけスポット情報が盛りだくさん!

CHECK!夏祭り 2025の開催情報はこちら

おでかけ特集

今注目のスポットや話題のアクティビティ情報をお届け

アウトドア特集

アウトドア特集

キャンプ場、グランピングからBBQ、アスレチックまで!非日常体験を存分に堪能できるアウトドアスポットを紹介

ページ上部へ戻る