コーヒーで旅する日本/関西編|多彩なブレンドとキャッチーな提案で、コーヒーをもっと身近に親しみやすく。「KAMIN COFFEE ROASTERS」

関西ウォーカー

X(旧Twitter)で
シェア
Facebookで
シェア

地元の嗜好に応える5種類のオリジナルブレンド

日々の焙煎データはパソコンで細かく管理

焙煎士とともに店長も兼任し、やがて支店もできるなど一見、順調に見えたが、ここで再び西田さんの職人気質が頭をもたげる。「規模が大きくなってくると焙煎から離れる時間が長くなったのもあって、もっとコーヒーのことに集中したいと思ったんですね。和歌山に戻ってから、料理人さんと知り合うことが多かったのですが、皆さんジャンルやメニューなどに特化して個性を打ち出していた。カフェというのは何でもありの分、個性としては曖昧な印象だったので、自分も専門性を持ちたかったんです」。

先々、焙煎量が増えることを見越して、焙煎機は5キロサイズを導入


9年勤めたフェイバリットコーヒーでの経験を土台に、2020年に独立。前職では深煎りのコーヒーがメインだったが、自店では中浅煎り~深煎りまで、焙煎度も幅広く提案。その柱となるのはオリジナルのブレンドだ。「扱っているのはスペシャルティコーヒーですが、シングルオリジンだと農園や産地の特徴が前面に出ます。ブレンドなら、配合で店のオリジナリティを出せると思ったんです。ブレンドをベースにして楽しんでもらうため、バラエティも増やし、飲みやすさを打ち出しています」

NEGOROブレンド(右)のラベルは、地元名産の根来塗をイメージ


店の顔であるKAMINブレンドを中心に、焙煎度が浅めのKOYA、NEGORO、深めのHINATA、KUMANOと、地元・和歌山の地名を冠したブレンドは現在5種、シングルオリジンは7種を用意。そのうち、お客が購入する6割がブレンド、さらにその4割をKAMINとKUMANOが占める。「界隈で豆を購入してくださるのは40~60代の方が多く、酸味を抑えた深めの焙煎で、冷めても飲み飽きない味が好まれます。深煎りのマンデリンも、比較的、上の世代の方に喜ばれますね。カフェの運営でお客さんの好みをとらえる難しさを体感してきたこともあり、まずは地元の嗜好やニーズに応えて、そこで認めてもらえたら、徐々に味の幅を広げて自分の志向も出していければと考えています」

「新メニューとして、夏のコーヒーゼリーも思案中」と西田さん


「KAMIN COFFEE ROASTERS」の味作りを担う焙煎機は、前職で使っていた半熱風式から直火式にシフト。「半熱風は扱いやすいですが、どこか中庸な味わいに仕上がる印象があって。直火だとコントロールは難しいですが、ハマれば豆による違いをしっかり出しやすい。まさに炎で豆を焼いて“調理する”感覚で捉えています。直火式は周りで使っている人も多いので、検証がしやすいというのも理由の一つ」と西田さん。KAMINブレンドの、柔らかな口当たりとまろやかな酸味、ふっくらと広がる甘い余韻と飲みごたえは、直火による火入れならではだ。

ペーパードリップコーヒー410円。ネルドリップや水出しアイスコーヒーもテイクアウトできる


コーヒーに対する間口を広げる、テイクアウトの名物メニュー

デザート感覚のアイスウインナーコーヒー518円。クリームに乗せたザラメが食感のアクセント

ブレンドを中心とした豆のラインナップで地元の嗜好に応える一方、テイクアウトのコーヒーには、今どきのひと工夫も凝らしている。メニューはほぼドリンクのみだが、その中で、たっぷりとクリームを乗せたカフェオレとウインナーコーヒーは、“映える”一杯としても人気を集めている。

「若い世代向けにコーヒーに対するハードルを下げてもらうため、スイーツ寄りのメニューでお客さんの間口を広げようと考案したのがこの2種類。特にウインナーコーヒーは、最近、出している店も少なくなりましたが、大阪の老舗喫茶店で飲んでおいしいと思ったのがきっかけで、この形になりました。今は皆さんの生活リズムが速くなり、喫茶店でゆっくりする時間がないなかで、テイクアウトでちょっと贅沢したい時に飲んでもらえれば」と西田さん。

実は、コーヒーのメニューは、ネルドリップも選べるのだが、これも「飲んだことない人が多いので、“そんな淹れ方もあるんや”と、知ってもらう体験版みたいな感じ。店としてのこだわりは前に出しすぎず、普段コンビニなどでコーヒーを飲む方が、次のステップくらいの感覚で選んでもらえればうれしい」

カフェオレベースは、工具箱を使ったディスプレイもおしゃれ


カラフルなパッケージラベルや、手にしやすいカフェオレベースの小瓶など、デザインやビジュアルにもコーヒーへの興味を引く工夫を随所に凝らす。「和歌山で、豆の小売りがメインの新しい店はまだ少なく、前例がほぼないので手探りのところもあります。コロナ禍で他の店を見に行ったりはできませんでしたが、その分、自分で考えたオリジナルな店になったと思います。まずは地元に定着して焙煎量を増やしていきたい」という西田さん。地元のビーンズショップの先駆けとして、より手軽にコーヒーを楽しめる提案を続けるべく、今日も朝から煙突に煙が上がる。

店名の由来でもある煙突。毎朝上る煙が開店準備のスタートを知らせる


西田さんレコメンドのコーヒーショップは「珈琲もくれん」

次回、紹介するのは和歌山市の「珈琲もくれん」。
「和歌山の自家焙煎コーヒー店の先駆けで、地元のコーヒー好きが必ず通る登竜門的一軒。コーヒーにはまりだした頃によく行っていました。初めて訪ねると、コーヒー専門店独特の世界に入り込んだ感覚になりますね。若い世代にもファンが多く、個性的なロースターとして定着している姿は、店を続ける上での目標にもなっています」(西田さん)

【KAMIN COFFEE ROASTERのコーヒーデータ】
●焙煎機/フジローヤル 5キロ(直火式)
●抽出/ハンドドリップ(カリタ ウェーブドリッパー、ネル)
●焙煎度合い/浅煎り~深煎り
●テイクアウト/あり(410円~)
●豆の販売/ブレンド5種、シングルオリジン6~7種、100グラム648円〜

取材・文/田中慶一
撮影/直江泰治


※新型コロナウイルス感染症(COVID-19)拡大防止にご配慮のうえおでかけください。マスク着用、3密(密閉、密集、密接)回避、ソーシャルディスタンスの確保、咳エチケットの遵守を心がけましょう。

※記事内の価格は特に記載がない場合は税込み表示です。商品・サービスによって軽減税率の対象となり、表示価格と異なる場合があります。

  1. 1
  2. 2

この記事の画像一覧(全13枚)

キーワード

テーマWalker

テーマ別特集をチェック

季節特集

季節を感じる人気のスポットやイベントを紹介

いちご狩り特集

いちご狩り特集

全国約500件のいちご狩りが楽しめるスポットを紹介。「予約なしOK」「今週末行ける」など検索機能も充実

お花見ガイド2024

お花見ガイド2024

全国1300カ所のお花見スポットの人気ランキングから桜祭りや夜桜ライトアップイベントまで、お花見に役立つ情報が満載!

CHECK!今が見頃の花見スポットはこちら

ページ上部へ戻る