コーヒーで旅する日本/関西編|追求するブレンドの可能性、「Yeti Fazenda COFFEE」
関西ウォーカー
多彩な品揃えに作り手の個性を表現する“ブレンドオンリー”の提案

古めかしい愛機で焼く豆は、すべてブレンドで提供するのが、打出さんのモットー。開店当初はシングルオリジンもあったそうだが、1年後には、すっかりブレンドオンリーに。「自分ならではの味を提案したいと思った時に、味の作り方に個性が出るブレンドが面白いと思ったんです。ブレンドは、いろんな豆の風味が合わさることで味が安定する。鍋の出汁と同じ感覚ですね。肉、魚、野菜など一緒に煮た方が、旨みが重なり厚みができます。あとは素材の組み合わせと濃度の塩梅だけ。出汁にも、すっきりした和風から、濃厚な豚骨まで濃淡あるように、浅煎りから深煎りまで味の幅を作って選択肢を広げるようにしています」

扱う豆はすべてスペシャルティグレード。それでも、希少なゲイシャ種やデカフェまでもブレンドするというから徹底している。定番のブレンドは、味の傾向の軸となる、バランスの取れたイエティブレンドを中心に、甘い蜜の味をイメージした“花”、チョコレートライクな“スノー”、コクのある“クラシック”とデカフェの5種からスタート。さらに直近では、ジューシーな果汁を表現した浅煎りの“フルッタ”、芳醇な洋酒の香りを思わせる“ボンボン”が加わり、より多彩さを増している。

また、テイクアウトのコーヒーを注文する際に、カラフルなコーノ式ドリッパーを使った抽出にも注目。通常、豆を蒸らす時間が空くものだが、ここでは点滴で湯を落とし始めると、次第に湯量を増やし、最後まで途切れることなく注ぎ続ける。「蒸らしはなく、流れでそのまま入れ続けるのがコーノ式抽出法の特徴。点滴でじっくり時間をかけて、湯を少しずつ浸透させ、最初に豆の旨みのええとこだけを出して、最後に濃度を調整する。早く出し切るより、しっかり湯を通して、ブレンドした豆の幅広い味を出したい」と打出さん。焙煎、ブレンド、抽出まで、明確な味のイメージをぶらさず、店の個性を通底させる仕事ぶりは、長年の経験のなせる業だろう。

全国各地のイベントでも発信、汲めども尽きぬブレンドの面白さ

開店時にはカフェも備えていた店は、コロナ禍の影響もあり、テイクアウトのみとなり、現在はイベント出店を中心に活動している打出さん。これまでに、仙台や東京、さらにはベルリンや台湾など、行動範囲は国内外を問わない。「会社時代は交流範囲が狭くて、コーヒーというジャンルの中だけにとどまっていました。イベントに参加すると、クラフトやお菓子など、他のジャンルの人とのつながりができますし、さらに、その土地ならではの嗜好の違いも分かります。その面白さに気付いてから、さらにあちこちに行くようになりました。店で待っているのではなく、自ら動かなければ、今あるご縁もなかったと思います」
今では、イベントに参加するだけでなく、自らも主催となり、2020年に岐阜で新たなイベント“コーヒーカウンター”をスタート。各店がオリジナルのブレンドだけを提供するという、打出さんならではのユニークな発想が話題を呼んでいる。「2014年の第1回から参加している、岐阜のサンデービルヂングマーケットのスタッフと、コーヒー主体のイベントをしたいと話していたのが、そもそもの始まり。ブレンド縛りのコーヒーイベントは、今までなかった新しい試みです。この条件だと、店の個性が出やすいし、何より店主の皆さんも味作りを考えるきっかけになる。スペシャルティコーヒーはシングルオリジン中心となりがちですが、違う方向性を提案できればと思っています」。2022年には、名古屋で“BLEND COFFEEとパンの虜”と銘打ったパンとコーヒーのコラボ企画も立ち上げ。イベントを通じてファンを広げ、岐阜・名古屋から店を訪ねるお客も多い。

近年もコーヒーシーンは大きく変化を続け、豆の個性も一層広がったこともあり、打出さんが追求するブレンドの醍醐味はいまだ尽きないようだ。「簡単に想像できない味の方が、飲むときにも楽しみがあります。その意味で、ブレンドは想像を巡らせる余地が大きい。作り手も豆を配合した結果が予想外になることもあります。一つのブレンドを考えるのは、調味料を組み合わせて料理の味を仕上げる過程にも近い。そのさじ加減一つが、表現の違いやオリジナリティになるんです」
かつて、ブレンドコーヒーは個性の弱い豆を混ぜて作る印象が強かったが、そんな時代は今は昔。「むしろ、これからはブレンドが一番面白くなるのではと思っています。お客さんも、いろいろ試したいという気持ちがあって、種類が増えたら興味を持ってくださる。今年は店のブレンドの種類を倍くらいにしたい。まだまだ、これから増えていきますよ」と打出さん。ほぼ無限にある豆の組み合わせから、まだ知らない味を生みだす過程は、コーヒー屋冥利に尽きる時間に違いない。

打出さんレコメンドのコーヒーショップは「ゆげ焙煎所」
次回、紹介するのは、兵庫県西宮市の「ゆげ焙煎所」。
「店主の岡本さんとは、台湾のイベントでブースが隣になったのがきっかけで、自分が主催する岐阜のイベントにも参加してもらっています。お客さんにも伝わりやすい、穏やかなコーヒーの味わいは、柔らかく親しみやすい岡本さんのキャラクターそのまま。地元・西宮を中心に多くのファンを持つ、人気ぶりも納得の一軒です」(打出さん)
【Yeti Fazenda COFFEEのコーヒーデータ】
●焙煎機/フジローヤル 9ポンド(約3.3キロ・直火式)
●抽出/ハンドドリップ(コーノ式)
●焙煎度合い/浅煎り~深煎り
●テイクアウト/あり(500円~)
●豆の販売/ブレンド7種、100グラム880円〜
取材・文/田中慶一
撮影/直江泰治
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