野生下の生息数はわずか300~500頭のスマトラトラ。その原因は私たちの生活にもあり!?【会えなくなるかもしれない生き物図鑑】

東京ウォーカー(全国版)

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いくつものハードルを乗り越えて、ようやくたどり着く繁殖

――順調に見えるスマトラトラの繁殖だが、その背景には飼育員の並々ならぬ苦労が隠れている。

繁殖にはいくつかのハードルがあります。最初の難関が、メスの発情を読み取ること。バユは発情が行動に出やすく判断が容易でした。扉をバンバンたたいたり、吠えたり、ケアヒと鳴き合ったりする様子が見られたので、発情が来たと判断して、翌日からオスとメスを同居させていました。

現在はダマイとケアヒの繁殖に向けて頑張っているのですが、これが結構苦戦しています。昼も夜もビデオで行動を観察していますが、目立った変化が見られない。それは個体差があるので、仕方のないことなのですが。できるだけ発情をとらえられるよう毎日観察し、チェックシートを付けて、いつもと違う行動がないかを把握するよう努めています。

発情が読み取れたら今度は同居ですが、これも高いハードルの一つです。トラは基本的に単独生活をする生き物なので、オスとメスは繁殖期にしか出会いません。発情を読み間違えると、ケンカをしたり、一歩間違えば殺し合いになることもあるので、園では厳戒態勢で臨んでいます。すぐに2頭を離せるような体制にして、お客様にも非公開で実施しています。

過去に同居を試みたところ、ケアヒとバユがケンカになったことがあり、とても危険な思いをしました。大事には至りませんでしたが、発情の見極めを間違えたことによってトラを死なせてしまってはいけないので、日々の観察の重要性を再認識しました。

同居がうまくいき、交尾が成立した後は毎日の行動をチェックしたり、フンの中のホルモンを測定して妊娠の有無を観察します。しかし、無事に繁殖したとしても子供が成育せず、亡くなってしまうケースもあるので、生まれたあとも安心できないのが現実です。

丸太で爪を研ぐケアヒ。展示場に出てすぐにこうした行動が見られる写真提供:八木山動物公園フジサキの杜


うれしいトラからのあいさつ

――苦労の多いスマトラトラの飼育だが、その中でも喜びに感じられることがある。

トラ同士はシュッという音を鼻で鳴らしてあいさつします。飼育員が「おはよう!」と入っていくと、飼育員にも鼻を鳴らしてあいさつしてくれることがあります。そんな時は親和的に感じてくれているんだなと感じて、とてもかわいいし、うれしく思います。ただ急に背中を見せたり、急な動きをするとすごい声で吠えて怒ることも。そういう点はやはり野生動物。吠えたり、威嚇したりする姿もトラらしくて、かっこいいと思います。

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