コーヒーで旅する日本/九州編|目指すのは、地域のハブ的存在のロースタリー。「BLUE BEANS ROASTERY」

九州ウォーカー

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バランスに秀でた、“普通”においしい一杯を

ハンドドリップはすっきりとしながらも、しっかりコーヒーの味わいを楽しみたい人におすすめ

坂下さんは2017年のジャパンエアロプレスチャンピオンシップで全国3位に輝くなど、抽出に関しては高い技術を有し、産地や焙煎度合いなど豆に合わせた確かな抽出レシピもある。一方で焙煎は「BLUE BEANS ROASTERY」の店長になってから初めての挑戦だったそう。

「狙った味わいを抽出するのは長年の経験もあり、なんとなくやり方が見えるのですが、焙煎に関しては、まったく知識がないところからのスタートで、最初は試行錯誤の連続でした。焼いては飲んで、悪い点を少しずつ改善するの繰り返し。もともとコーヒーを淹れた際にテイスティング(※1)をして、味わいの良し悪しを判断していましたが、焙煎する場合はカッピング(※2)を通して、客観的に点数を出す必要がある。もちろん焙煎を始める前もカッピングは見様見真似でやっていましたが、しっかり基礎から学ぶ必要があると実感し、日本スペシャルティコーヒー協会が主催するカッピングセミナーに参加したりもしましたね」

焙煎機はアメリカ製のDIEDRICH。半熱風式

そうやって少しずつ焙煎技術・知識を底上げし、焙煎に対する考え方も独自に確立。「もちろん、今のやり方、考え方が完全な正解だとは思っていませんが、お客さまの反応を見て、感想を耳にして、なんとなく、目指す味わいの方向性は定まってきたのかな、と思っています」と坂下さん。坂下さんが焙煎する際に最も大切にしているのは、アシディティ(酸)と甘味のバランスだ。「BLUE BEANS ROASTERY」に入る前は、坂下さん自身が淹れ手としてコーヒーを客に提供していたことから、抽出方法でそのバランスを良い具合に調整もできた。ただ、「BLUE BEANS ROASTERY」は豆売りにも力を入れるコーヒーショップ。豆を購入した人の抽出までコントロールするのは難しい。

開業から3年が経ち、「だいぶ焙煎機の特性もわかるようになってきた」と坂下さん

「お客さまご自身でコーヒーを淹れると考えた時に、店のように挽き目を細かく調整して、湯温を1度単位で設定して、抽出量もしっかり計測して、というケースはほぼありません。つまり、いつも通り普通に淹れて、普通においしい一杯でないといけないわけです。焙煎を始めた当初は豆が持っている個性を最大限引き出すことを意識していましたが、そこに重きを置きすぎるとアシディティと甘味のバランスがいまいちという結果も何度か経験しました。そのため、今の僕なりに、まず第一に考えるべきは味わいのバランスという答えにたどり着きました」と、焙煎を通して目指す味わいについて説明する。

自身の価値も高めて、地域と深く関わっていく

【写真】コーヒー豆は常時シングルオリジン5〜7種、ブレンド1種をラインナップ

坂下さんは、「BLUE BEANS ROASTERY」を任されるようになって、より地域との関わりを大切にしたいと考えるようになった。「ロースタリーという業態を始めて強く感じたのが、地域に暮らすお客さまがいてくださるから成り立っているということ。地域に愛されることが大切とはよく言いますが、まさにその通りだと実感しています。だからこそ、僕らが地域のためにできることがあるなら、どんどんやっていきたいと思っています。現在、昔からこの地区で行われてきたイベントに企画や運営から携わらせてもらっています。コーヒーショップはさまざまなお客さまが訪れる場所であり、ここをきっかけに人と人とが繋がる機会もたくさんあります。そういった立ち位置の僕らだからこそ、できることはきっとあるはず」と力強く話す。

エスプレッソトニックと季節替わりの焼き菓子。写真はブルーベリー クランブル パウンドケーキ(400円)

今は焙煎、時に抽出、店舗の運営とさまざまな業務に携わる坂下さんだが、個人的な目標もあると言う。「焙煎の技術を磨いていくのはもちろん必要ですが、僕はコーヒーを淹れるのがやっぱり好き。だから、ブリューワーズカップやハンドドリップ チャンピオンシップなど、抽出に関わる競技会に挑戦し、好成績を残すのが今の目標です。焙煎の競技会もありますが、お客さまにご自宅で体験できるご提案をする際、より身近に感じていただける部分って抽出だと考えていて。全国の競技会で良い成績を残した人が教えてくれる、おいしいコーヒーの淹れ方って、すごく興味を惹かれませんか?(笑)」と笑顔で話す。

エスプレッソトニックは爽やかなテイストで、夏に人気が高い

自分自身、純粋にコーヒーの仕事を楽しみ、さらに興味があるから、とことん突き詰めていく坂下さん。そして、開業からわずか3年だが小売り量、卸しの件数も増え、焙煎量を年々伸ばす「BLUE BEANS ROASTERY」。今後も地域と深く関わり合いながら、“かんまち”のハブ的存在として多くの人の心を掴んでいきそうだ。

抽出技術の向上も坂下さんの目標の一つ


坂下さんレコメンドのコーヒーショップは「ロッサ焙煎所」

「2年ほど前にロッサコーヒーさん主催でラテアートの大会が行われることを知り、僕も参加させていただきました。ロースター兼オーナーの宮本さんとは、その時に初めてお会いし、さまざまな話をしました。その後、東京で開催されたSCAJで偶然再会して、それから交流を深めています。ロッサさんは宮崎ではスペシャルティコーヒーのパイオニア的存在ですし、宮本さん自身、バリスタとしても高い技術を持たれている方です」(坂下さん)

【BLUE BEANS ROASTERYのコーヒーデータ】
●焙煎機/DIEDRICH IR-2.5
●抽出/ハンドドリップ(Kalitaウェーブドリッパー)、エアロプレス、浸漬式ドリッパー(HARIOスイッチ)、エスプレッソマシン(Slayer)
●焙煎度合い/中浅煎り〜中深煎り
●テイクアウト/あり
●豆の販売/100グラム900円〜

※1…抽出したコーヒーの味わいを「良い」「悪い」という観点で評価すること。イメージとしては味見に近く、淹れたばかりのコーヒーで行うのが基本
※2…生豆の個性や焙煎の合否などをチェックする際に大切な作業。挽いたコーヒー粉に湯を注ぎ、上澄み液だけをスプーンですくって評価するため、抽出によるブレが少ない。また湯を注いで長時間経過した液体からコーヒーの品質の確認もできる

取材・文=諫山力(knot)
撮影=大野博之(FAKE.)

※新型コロナウイルス感染症(COVID-19)拡大防止にご配慮のうえおでかけください。マスク着用、3密(密閉、密集、密接)回避、ソーシャルディスタンスの確保、咳エチケットの遵守を心がけましょう。

※記事内の価格は特に記載がない場合は税込み表示です。商品・サービスによって軽減税率の対象となり、表示価格と異なる場合があります。

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