コーヒーで旅する日本/九州編|自身が考える世界観を大切に、そしてすべてを一様に。「月白 喫茶室・展示室」

九州ウォーカー

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全国的に盛り上がりを見せるコーヒーシーン。飲食店という枠を超え、さまざまなライフスタイルやカルチャーと溶け合っている。なかでも九州はトップクラスのロースターやバリスタが存在し、コーヒーカルチャーの進化が顕著だ。そんな九州で注目のショップを紹介する当連載。店主や店長たちが気になる店へと数珠つなぎで回を重ねていく。

喫茶室と展示室の2つの空間に分かれている

九州編の第42回は、福岡市六本松にある「月白 喫茶室・展示室」。六本松の住宅地の一角にあり、しかも民家内の最奥と場所はとてもわかりづらい。しかも目立つところに看板も掲げておらず、この時点ですでに独特な雰囲気の店だろうと想像できる。壁などが取り壊されたままの暗い民家の中を進み、中庭に現れた、ガラス張りの小さな箱。ここが「月白 喫茶室」だ。

店主の平塚国昭さん

Profile|平塚国昭(ひらつか・くにあき)
1983(昭和58)年、福岡県福岡市生まれ。大学卒業後、在学中からアルバイトしていた飲食店に就職。20代半ばでカフェオーナーに声をかけてもらい転職。コーヒーの世界へ足を踏み入れる。よりおいしいコーヒーを求めて筑紫野市の自家焙煎珈琲 萌香と出会う。抽出を自分なりに突き詰め、2017年、城南区田島に「珈琲月白」を開業。2020年、六本松に移転し、屋号も「月白 喫茶室・展示室」に改名。

だれにとっても“場にひらきやすい”空間でありたい

【写真】喫茶室は前面がガラス張りになった小さな部屋

レコメンドしてくれたROASTERY MANLY COFFEEの須永さんが「店が醸し出す雰囲気、メニュー…すべてに衝撃を受けた」と話していたように、いわゆる普通のカフェではない。「月白 喫茶室」は5名入ればいっぱい、かつスタンディングの小さな空間。カウンター内に立つ平塚さんの立ち振る舞い、所作もつぶさに見える距離感ということもあってか、どこか背筋が正されるような空気が流れている。「おひとり、おふたりほどでご来店いただければと思います」とSNSにも書いてある通り、少人数での来店が望ましい。

価値観、言葉選びも独特な平塚さん

小さく、カウンターのみの店というのは往々にして店主との会話を楽しむのが醍醐味のように捉えられがちだが、「月白 喫茶室」は違う。もちろん会話するのはまったく問題ないのだが、なぜか静かに過ごしたくなる空気感を平塚さんは漂わせているように感じる。

「お客さまとお話することもありますし、なにも喋らない時もあります。当たり前ですが、ここでの過ごされ方は自由で良い」と平塚さん。なぜ”おひとり、おふたり”なのかと問うと、「なんとなくですが、1人の方が場にひらきやすく、その場所に馴染める気がしていて。個人的に3人、4人、5人という構図が好きじゃないというのもあります。例えば、お客さまと僕が2人で話していて、そこに新しくお客さまが来店される。でもそのまま僕が会話を続けてしまうと2対1の構図ができあがってしまう。それは暴力的じゃないですか?」と逆に問い返された。

さらにこうも続ける。「この空間でお客さまと会話する場合、僕はみなさんができる会話しかしないようにしています。クローズドなコミュニティはつまらないし、蚊帳の外にいる人は居心地が悪いですよね」。茶室の中ではみんな平等という考え方が茶の湯にはあるが、それに通ずるものを、平塚さんの言葉、「月白 喫茶室」の空間から感じる。やはり不思議な店だ。

展示室。年に5、6回不定期で展示会を行う。会期中以外は平塚さんが選書した書籍を販売

違った視点を持っているからこそ

珈琲 温(500円)。器は天草の陶芸家、金澤尚宜氏が手掛けたそば猪口

平塚さんが喫茶店の世界に入ったのは、20代のころ、カフェで働いたのがきっかけ。「カフェで働くまでは、コーヒーや紅茶、お茶の知識はゼロでしたが、お客さまにご提供するものですし、店に立つからにはしっかり学び、技術を身に付けたいと思いました。その当時から現在と同じく、筑紫野市にある自家焙煎珈琲 萌香さんの豆を使わせていただいていたのですが、萌香さんのコーヒーを飲んで、苦いだけの飲み物じゃないと気付きました。
それからはよりおいしく淹れるために知識、技術を磨いていったのですが、僕がおもしろさを感じたのは、コーヒーのことよりも、味の違いがわかるようになった体の変化のこと。味の違いなんて一切わかっていなかった自分の体が変わるってすごいことだな、と素直に驚きましたね」と平塚さん。
やはり着眼点が違う。平塚さんと話していると、「そうか」「なるほど」「そんな考え方もできるのか」という発見の連続だ。決して話が合わないということではなく、当たり前と思っていたことも違った見方があるんだと気付かされる体験。きっと「月白 喫茶室」を訪れた多くの人が、それを感じているのではないだろうか。

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