コーヒーで旅する日本/九州編|ゆっくりで良い、継続していくことが大切。地方で築いたコミュニティと共に歩む「MY珈琲」
九州ウォーカー
邪魔しない焙煎を

「MY珈琲」の焙煎機は直火式だ。半熱風式を選択することもできたが、山口さんはあえて直火式という選択をした。「直火式は火力の調整が難しく、最初は大変なこともたくさんありました。釜内の温度を最適にするために常に注意を払っておく必要がありますし、ダンパーや火力を細かく調整しないといけません。ただ、そのマニュアルな感じが僕は好きで、今は直火式でやってきて良かったと思っています。なにより、地方という土地柄、深煎りが好まれる傾向にあり、そういった意味でも直火式は合っていましたね」
その言葉通り、豆のラインナップはシティロースト、フルシティローストを中心に、しっかり深煎りのフレンチローストまで用意。ブレンド3種、同じ産地の焙煎度違いを含めてシングルオリジン約10種が基本的な豆のラインナップだ。

山口さんは焙煎について「素材が良いので、とにかく“邪魔をしない”焙煎を心がけています。ポテンシャルを引き出すというより、消さない感覚に近いです」と話す。
さらにスペシャルティコーヒーについてこうも続ける。「スペシャルティコーヒーは産地によって明確な個性があり、ワインにとても近い飲み物だと思っています。佐世保に店を開いて、ソムリエの方と仲良くなったんですが、テロワールといったワインの概念に触れ、よりその考えを強くしましたね。ソムリエの方が当店のコーヒーを広めてくれたり、佐世保市役所の近くにあった喫茶店の店主が豆を使ってくれたり、佐世保で繋がったさまざまな人の縁にも助けられ、今があります」と話す。

このエピソードを聞いて、やはりローカルで店を開くということは、その地域で信頼できる人々とコミュニティを作ることが大切だと感じた。その点で言うと、人当たりが柔らかく、常に明るい性格の山口さんは地方でコーヒーショップを営むのに最適だったのかもしれない。

佐賀県伊万里市から国見峠を越えてすぐということもあり、現在は佐賀県、福岡県からドライブがてら訪れる客も多い「MY珈琲」。一方で、近隣の子供がおつかいでコーヒー豆を買いに来ることもしばしばあるというから、どこかほっこりする。およそ15年にわたり愛される、地方のロースタリー。“ゆっくりと営んでいこう”という山口さんの目標は佐世保市ののどかな町で叶えられている。
山口さんレコメンドのコーヒーショップは「豆乃木」
「福岡県北九州市にある『豆乃木』。女性店主の板倉さん自ら焙煎をしており、店も女性らしい柔らかな雰囲気を醸し出しています。生豆の仕入れが同じLCFということもあり、仲の良い同業者の1人。普段はなかなか会う機会がないですが、ちょこちょこ連絡を取り合う仲です」(山口さん)
【MY珈琲のコーヒーデータ】
●焙煎機/フジローヤル直火式5キロ
●抽出/ハンドドリップ(KONO名門フィルター、HARIO V60)
●焙煎度合い/中煎り〜深煎り
●テイクアウト/あり
●豆の販売/100グラム700円〜
取材・文=諫山力(knot)
撮影=大野博之(FAKE.)
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