コーヒーで旅する日本/九州編|特別じゃなくていいと歩んだ12年。これからも日常に寄り添い続ける。「cafe MARUGO」

九州ウォーカー

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全国的に盛り上がりを見せるコーヒーシーン。飲食店という枠を超え、さまざまなライフスタイルやカルチャーと溶け合っている。なかでも九州はトップクラスのロースターやバリスタが存在し、コーヒーカルチャーの進化が顕著だ。そんな九州で注目のショップを紹介する当連載。店主や店長たちが気になる店へと数珠つなぎで回を重ねていく。

豆は同じ産地の豆の、焙煎度合い違いを合わせて、18種程度を用意

九州編の第49回は、福岡市薬院にある「cafe MARUGO」。多くの人気飲食店が建ち並ぶ警固本通りから南に少し歩いた場所で、2010年11月から営む。一見すると喫茶店の雰囲気だが、開業当初から自家焙煎に着手し、豆売りにも力を入れる。同店が創業時から掲げているのが「特別な一杯よりも、いつもの珈琲を心を込めて」というモットー。その言葉通り、スペシャルティ規格の豆も取り扱うものの、店では一切その言葉を使用しない。“特別”ではなく、“日常に寄り添う”。12年間、変わらぬ思いで歩んできた「cafe MARUGO」が愛される理由を探る。

店主の白石泰隆さん

Profile|白石泰隆(しらいし・やすたか)
1967(昭和42)年、福岡県北九州市生まれ。高校卒業後、東京でバイクのメカニックとして働く。勤めていたバイクショップが閉店したのを機に福岡市へ。叔母の紹介で勤めた老舗ロースタリーカフェで、コーヒーのおもしろさに魅了され、結果10年ほど勤務。退職後はコーヒーショップを開くつもりだったが、良い物件に巡り会えず、パン作りを学ぶためにベーカリーに就職。3年ほど働く中で、やはりコーヒーの世界で生きていきたいと、改めて独立を目指す。2010(平成22)年11月、薬院に「cafe MARUGO」を開業。2019年11月には、福岡市南区に「cafe MARUGO 向野店」をオープンし、現在、薬院店、向野店の2店舗を営む。

できるだけ酸味を出さない焙煎

おすすめは深煎りのマルゴブレンド。イートインのコーヒーは580円〜

「cafe MARUGO」といえば、ボディ感のしっかりある深煎りのコーヒーという印象が強い。店構え、店内の設えもクラシカルで、深煎りならではのコーヒーらしい良い香りが常に漂い、どこか落ち着いた雰囲気だ。店主の白石泰隆さんは独立に際し、自家焙煎をすることを当初から決めていたそう。

「約10年働いたロースタリーカフェでは抽出を担当していたので、焙煎は独学です。ただ、もともとバイクのメカニックをしていたこともあり、機械を扱うのは好きですし、マシンの特性を理解して、なぜこういう結果になったのか、といったことを考えるのも性に合っていました」と白石さん。

以前は薬院店で焙煎していたが、現在は向野店に焙煎機を移している

12年前から使い続けている焙煎機はラッキーコーヒーマシンの直火式。直火式を選んだのは、純粋に白石さん自身、深煎りのコーヒーが好きだったから。「私は個人的にコーヒーに酸味があるのが好きじゃなくて、中煎り、やや浅煎りのコーヒーもできる限り酸味を出さないような焙煎を心がけています。それは、シングルオリジンの浅煎りが流行った数年前も、変えることはありませんでしたね」

ずっと、いつものコーヒーでありたい

メニュー表にも書かれた店の想い

「特別な一杯よりも、いつもの珈琲を心を込めて」をモットーに掲げることもあり、できるだけ手頃な価格を維持することも大切に考えている白石さん。そのために、スペシャルティコーヒーに固執せず、ブレンドにはややグレードが落ちるコモディティコーヒーも一部使う。コモディティコーヒーはスペシャルティコーヒーと比べると欠点豆が多い。そのために、「cafe MARUGO」ではハンドピックを徹底している。焙煎前後に行うのはもちろん、コーヒーを抽出する前、豆を販売する前も気になる豆があれば取り除くなど、できる限り雑味の要因を排除する。

丸みのある味わいを大切に、店ではネルドリップでコーヒーを抽出

ただ白石さんは「昨今の物価上昇のあおりを受け、コモディティコーヒーでさえ仕入れ値が数年前の倍になっているんです。今まで100グラム560円〜販売できていたのですが、今年10月からブレンドを100グラム680円にしました。これが本当に心苦しいんです。生豆の仕入れ値を下げられるようなら、できるだけ手頃にお客様にご提供したいというのが本音」と話す。

その表情から見て取れるのは、値上げは苦渋の決断だったということ。ただ、「常連のお客様から、『まったく問題ないですよ』、『MARUGOさんが長く続いてくれることが大切』といった言葉をいただき、感謝しかありません」と続ける白石さん。こんなエピソードに感じるのは、同店が常に客想いの姿勢で店を営んできたということだ。

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