コーヒーで旅する日本/九州編|町のみんなが自然と集う公民館的スタンド。「FAKE IT COFFEE」のリアル

九州ウォーカー

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全国的に盛り上がりを見せるコーヒーシーン。飲食店という枠を超え、さまざまなライフスタイルやカルチャーと溶け合っている。
なかでも九州はトップクラスのロースターやバリスタが存在し、コーヒーカルチャーの進化が顕著だ。そんな九州で注目のショップを紹介する当連載。店主や店長たちが気になる店へと数珠つなぎで回を重ねていく。

水出しアイスコーヒー(400円)。店のすぐ横を流れる御笠川をバックに

九州編の第53回は、福岡市東比恵にある「FAKE IT COFFEE」。2020(令和2)年4月オープンと、店ができてまだ2年強だが、コーヒー好きの間で最近よく耳にする店。しかも、いろいろな人のSNSやブログでは店主の大瀬良卓也さんの近影が出てくる、出てくる!「この店は“人”に魅力がありそう」という直感通り、取材した日も開店早々、常連が訪れ、大瀬良さんとの会話に花が咲く。まるで町の公民館のような、コミュニティカフェならぬ、コミュニティスタンドだ。「FAKE IT COFFEE」が、東比恵という町で愛される理由を探ってみた。

店主の大瀬良卓也さんは、バリスタ視点を持ったロースター

Profile|大瀬良卓也(おおせら・たくや)
1983(昭和58)年、福岡県福岡市生まれ。専門学校卒業後、一度はアパレル関係の会社に勤めるが、海外で暮らす夢を叶えるために退職。ワーキングホリデー制度を利用し、オーストラリアのメルボルンへ。学生時代に約2年、シアトル系コーヒーチェーンでアルバイトをしていた経験もあり、メルボルンではコーヒーショップに勤務。その経験から本格的にコーヒーの奥深さにハマる。その後、イギリスで1年半、カナダで1年暮らし、その間も現地のコーヒーショップでバリスタとして働き、抽出の技術を磨く。2016(平成28)年に帰国し、以前から好きだった福岡市のハニー珈琲に入社。約3年半、博多区那珂にある本店にて勤務した後、退職。2020(令和2)年4月に「FAKE IT COFFEE」をオープン。

川が見える景色が、なんか良くて

豆売りがメインだが、ドリンク目当てに訪れる常連も多い

「FAKE IT COFFEE」があるのは博多区東比恵。地下鉄東比恵駅から徒歩4分ほどと駅チカの立地だが、そもそも東比恵駅自体がそのエリアに住んでいたり、働いている人以外、そこまで頻繁に利用する駅ではない。なんとなく、国道3号や百年橋通りといった幹線道路が交わっていることから車で通過するだけのイメージもある。

「東比恵に店を開こうと思っていると友人や知人に伝えると、『え、なんで?』『もっと良い場所がありそう』といったことをたくさん言われましたね」と大瀬良さん。なぜそれでも東比恵を選んだのか。「ここから見える川の景色が良いなー、と思いまして」。確かに、カウンターから見える景色は市街地ながら、どこかのどかだ。

御笠川を見ながら、日々仕事

大瀬良さんは「定休日以外、毎日朝から夜までいる場所ですから、自分が気持ちよく仕事ができた方が良いと思ったんです。開業場所を決めるにあたり、いくつかの物件を見て決めるのがセオリーなんでしょうが、僕は最初に内覧したココに即決しましたね。駅も近いし、住んでいる人も多いし、なんとかなるかなって(笑)」と振り返る。

一帯はマンションが建ち並び、実際に多くの人が住んでいるのはわかるが、なかなかチャレンジングな選択だ。ただ、大瀬良さんが言うように、ずっと仕事をする場所と考えた時に、自分が常に気持ちよくいれられるというのは重要かもしれない。

周辺にはマンションやアパートが建ち並ぶ

そんな風に自然体で、感覚に従うことができるのは、オーストラリアのメルボルン、イギリス、カナダと合計4年半を海外で暮らした経験も関係しているのだろうか。「うーん、どうでしょう(笑)。ただ、メルボルンで体験した、当たり前にカフェが身近にある生活というのは、僕にとってはかなり魅力的で、これが理想だなって思いました。実際、カフェがある街自体が僕の目にはステキに映りましたし、なんとなく良い街の雰囲気っていうものを感覚的に感じているのかも」と大瀬良さんは話す。

行きあたりばったりも悪くない

好きな豆が選べるエアロプレスコーヒーは500円

海外ではずっとバリスタとして働いてきた大瀬良さん。一方で帰国後、就職したハニー珈琲では本店勤務となり、コーヒーを淹れるというより、裏方の仕事に従事した。「日本に帰ってきて、これからなにをしようと考えた時に、やっぱりコーヒーと関わる仕事がしたいな、って思ったんです。僕自身、もともとハニー珈琲さんのファンで、働くならハニー珈琲さんしかない!って、本店に履歴書を持参しました。ただ、その時はスタッフを募集していなかったみたいで、『本店勤務で良ければ』という感じで働かせていただけることになりました。本店は確かに裏方的な仕事が多いですが、僕にとってはそれもまた新鮮で。なにより焙煎をすぐ近くで見られたのは大きかったですね」

海外の古材を活用した内装もかっこいい

約3年半働く中で、将来のことを考えたという大瀬良さん。「ずっとどこかに勤めるというのはイメージできなくて、それなら自分で店をやるしかないかな、という感じで独立を意識しだしました。なんというか…すべて行きあたりばったりですよね」と笑う。流れに逆らわず、自身にとって最良の選択をしているとも言えるかもしれない。

ラテ(450円)。豆は店のハウスブレンドの一つ、中煎りブレンドを使用

そんな流れで「FAKE IT COFFEE」は開業したわけだが、オープンした時期はコロナ禍真っ只中。大手を振って“オープンしました!!”とアピールするのもはばかられ、ひっそりと店を開いたそうだ。「2020年4月というと、最初の緊急事態宣言が出された時期で、天神や博多といった繁華街にもほぼ人がいませんでした。外出するにしても、近所ぐらいなものでしたよね。そんな時期に店を開いたことで、近隣に暮らす方々が、『なんか新しい店ができてる』という感じで、コーヒーをテイクアウトしていただいたり、自宅用に豆を買ってくださる方が少しずつ増えていったんです。当店はカフェではなく豆売りをメインとした店なので、そういう意味では結果的にちょうど良い時期にオープンしたのかも」

スタートから東比恵エリアに暮らす人々に認知され、立ち寄ってもらえたと考えると、確かにそうかもしれない。

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