コーヒーで旅する日本/九州編|町のみんなが自然と集う公民館的スタンド。「FAKE IT COFFEE」のリアル
九州ウォーカー
“豆と向き合う”ってなんだ?

「FAKE IT COFFEE」は豆売りがメインの店だ。もちろんコーヒーは自家焙煎。ただ、この焙煎が大瀬良さんにとっては難関だった。長年バリスタとして働いてきたため、コーヒーを淹れることに付随して、おいしい・おいしくないの味わいの判断ができるのは当たり前。だからこそ、自分で焙煎したコーヒーのクオリティに納得ができなかったのだ。

「焙煎自体はカナダのコーヒーショップやハニー珈琲さんで実際に目にしてはいたものの、焙煎機を触ることはありませんでした。実際にやってみると、これがまったくできなくて。例えば10点満点だとしたら、最初は2点ぐらい…。何回トライしてみても、結果は大きく変わらない。最初の1年ほどは自分が理想とする味わいを作り出すことができず、毎日悩みまくっていましたね。ロースターさんが“豆と向き合う”ということを言わているのをよく耳にしていましたが、正直焙煎をしていなかったころは全然その意味がわかっていなかった。焙煎って本当に“豆と向き合う”、超地道な作業。ドツボにはまっては、なんとか抜け出して、そしてまたもっと深い穴に落ちていく、みたいな(笑)」と大瀬良さんは焙煎の難しさを語る。

ただ、大瀬良さんはとても素直な人だ。どうしても越えられない壁にぶつかれば先輩ロースターを頼り、時に実際に飲んでもらったストレートな感想を真摯に受け止め、少しずつ納得できる味わいに近付けた。もちろん、教えてもらうだけでなく、同じ焙煎機を使っている全国の店からコーヒー豆を取り寄せてはテイスティングを繰り返し、そこからヒントを見つける日々。それは今も変わらない。
「焙煎に関しては今も試行錯誤の連続です。もちろん始めた当初に比べれば、クオリティは上がってきていますが、まだまだやれることはあります。最初の1年は心が折れそうでしたが、今は楽しみながら焙煎と向き合えているのが成長ですかね」と笑う。

このポジティブさが、大瀬良さんのコーヒーにはよく表れていると思う。豆は深煎りブレンドでも一般的な中深煎り程度で、シングルオリジンはすべて浅煎りで統一。飲んだ瞬間にパッと明るさを感じ、そしてフレーバーも華やか。なにより、クリーンカップに秀でた味わいが良い。

「FAKE IT COFFEE」の屋号の由来は、“Fake it till you make it.”だ。英語圏の決まり文句のような言葉で、意味は“成功するまで、成功しているフリをしろ”だと大瀬良さんは教えてくれた。ストレートに”make it(成功する)”ではなく、“fake it(フリをする)”を屋号にしているところが、毎日を遊び心をもって楽しむ大瀬良さんの人生観を表しているようにも感じた。
大瀬良さんレコメンドのコーヒーショップは「YOAKE COFFEE」
「『YOAKE COFFEE』の宝満くんはハニー珈琲の時の同僚です。彼も海外での滞在経験があり、海外とコーヒーが好きという点で感覚が近いと感じています。今となってはどちらもコーヒー屋を営むようになりましたが、今だによく話しますし、刺激をもらえる大切な存在です。見た目の割に(笑)、程よく力の抜けたキャラクターと、型にハマらないコーヒー屋としてのスタイルがどの層のお客様にもハードルを感じさせることのないステキな店。素晴らしい原料と丁寧な抽出でコーヒーは最高においしいですし、コーヒー以外のドリンクもあるので、さまざまなシーンで気軽に立ち寄りやすいと思います。自宅の近くにあって欲しい一店です!」(大瀬良さん)
【FAKE IT COFFEEのコーヒーデータ】
●焙煎機/DIEDRICH 2.5キロ
●抽出/エスプレッソマシン(La Marzocco Linea mini)
●焙煎度合い/浅煎り〜中深煎り
●テイクアウト/あり
●豆の販売/150グラム1300円〜
取材・文=諫山力(knot)
撮影=大野博之(FAKE.)
※新型コロナウイルス感染症(COVID-19)拡大防止にご配慮のうえおでかけください。マスク着用、3密(密閉、密集、密接)回避、ソーシャルディスタンスの確保、咳エチケットの遵守を心がけましょう。
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