コーヒーで旅する日本/関西編|コーヒーを介して人のつながりを広げる、小さな店にあふれる“新しい出会い”の芽。「COCO COFFEE」

関西ウォーカー

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季節ごとの多彩なアレンジがコーヒーを楽しむ入口に

自家製レモンシロップとエスプレッソを合わせたレモンコーヒー(650円)

コンパクトな店ゆえに、メニューはドリンクのテイクアウトが主体。常時5~6種をそろえるコーヒーは、神戸のLANDMADEに所属しながら独自に活動するAMAZING COFFEE ROASTERから仕入れ、時季替わりでシングルオリジンを提案する。実は開店当初は、ほぼコーヒーのみで豆の個性を前面に打ち出していたという西村さん。「その頃はまだ、コーヒーに取りつかれていたような状態だったので(笑)。専門店的なカラーを前面に出していたんですが、お客さんの声を取り入れてアレンジドリンクを試してみたら、いろんな素材を使って作れることに気付いたんです。それ以来、いきなりコーヒーを勧めるではなくて、アレンジも含めてお客さんが自由に楽しめることで、コーヒーに関心を持つきっかけもできるのでは、と思い直したんです」

キッチンには地産のレモンや梅を漬けた自家製シロップがずらり


季節ごとに入れ替わる素材は、ブルーベリー、ライム、スモモなどのフルーツに、トマト、赤紫蘇、梅、ベルガモットといった意外な組み合わせも。いまや店の壁に貼られたメニューには、約40種を数えるまでにバラエティが広がった。「他の食材を合わせることで、コーヒーだけでは出せない味を作れるのが魅力。そのバランスは、レストランなどで料理の味合わせの中から学ぶこともあります。以前よりコーヒー豆の質が上がり、クリーンな味わいで、素材に寄り添ってくれる酸味の個性があるからできること」と西村さん。近隣の農家から届く素材も多く、地元産のレモンや梅を使った自家製シロップは、看板メニューの一つともなっている。

MAROUカカオモカ(650円)。芳醇なカカオの酸味と香りが効いた贅沢な味わい


そのシロップを使った、定番人気のレモンコーヒーは、ヨーグルトのようなさっぱりとしたコクと酸味が爽やかな一杯。また珍しい取り合わせとしては、台湾の香辛料・馬告(マーガオ)のラテも好評。ほのかな辛味と苦味、レモングラスに似た芳香が、ラテの甘味をぐっと引き立てる新感覚の味わいだ。さらに、店内でも販売しているベトナムのシングルオリジンチョコレート専門店・MAROUのパウダーを使ったカカオモカも、後を引く華やかなカカオの香りと、まろやかな甘みが印象的だ。「コーヒー好きでなくても楽しめるよう、今は豆の説明も一切、書いてません。お話しながらお伝えできるからいいかなと思ってます」という西村さんの心境の変化も手伝って、リピーターも徐々に増え、今では季節ごとのメニューに固定のファンが少なくないという。

自作のイラストを貼ったカラフルなメニューが目を引く


コーヒーを通して、人と人のつながりが広がっていく場に

店の向かいには長屋を改装したギャラリーが。小さな庭は、テイクアウトしたメニューを楽しむテラス的なスペースにもなっている

ただ、ここを訪れるお客の目的は、多彩なアレンジドリンクばかりではない。店内ではお菓子や雑貨の販売に加えて、開店時からアーティストの作品展示を定期的に開催。さらには、3年前に、店の向かいの長屋を改装してギャラリーに、2年前には店の隣の空間を物販兼展示スペースにと、年々、活動の場を広げている。「店内で展示するアイデアは、開店前から考えていたこと。お店も慣れてくると面白みがなくなるので、どこかに非日常の体験を入れたかったんです」と西村さん。店の造りにも仕掛けがあり、隣につながる通路は、まるで秘密の抜け穴のよう。小さく身を屈めてくぐると、大人も思わず童心に帰ってしまう。

カウンターの下には、毎周年ごとに制作された、中村ムーチョよしてるさんの作品が並ぶ


自らもギャラリー巡りが好きで、展示を続けているうちに、方々の作家から声がかかるようになったという西村さん。今では県外の作家とのつながりも広がり、ジャンルもイラストから器まで多岐にわたる。長屋のギャラリーでは、時にライブドローイング、マルシェが行われ、アーティストのレジデンスになることも。「今は、長屋にコーヒーのセミナールームも準備中で、焙煎やラテアートの教室とかしたいですね。長屋で開催するいろんな展示やセミナーを通じて、寺子屋みたいに人が集まる場所になれば」と、構想を膨らませる。さらに、2022年からは、近隣の古いビルに新たなコミュニティースペース「ei」を準備中という西村さん。ナチュラルワイン&コーヒーの店と、ギャラリーの2フロアで、さまざまな広がりを持つ場にするべく、日々アイデアを温めている最中だ。

かつて憧れた“小さな店”は、徐々に広がり、10年の節目も近づいてきた。「とにかく長く続けることが一番の目標。10年目には、毎年周年で作品を作って下さる中村ムーチョよしてるさんの展示会をしたいですし、いろんな場所でつながりを得て、この店に関わってくれた方々と、何か大きなことをしたいですね」。一杯のコーヒーを通して広がっていく、新しい出会いを楽しみに訪れたい一軒だ。

昨年、ソムリエ資格を取得した西村さん。新展開の「ei」の構想にも生かされている


西村さんレコメンドのコーヒーショップは「TOBERA」

次回、紹介するのは兵庫県宝塚市の「TOBERA」。
「店主の森川さんは、開店される前にここを訪ねて来てくれて以来、交流が続いています。コーヒーはもちろん、サンドイッチなどのフードやスイーツまで、メニューの一つ一つが丁寧に作られているのが伝わります。お店はINNO.TOWN(イノタウン)と呼ばれる一角にあって、雑貨屋さんや本屋さんなど、いろんな店が集まっていて、ロケーションの面白さも魅力の一つです」(西村さん)

【COCO COFFEEのコーヒーデータ】
●焙煎機/なし(アメイジングコーヒーロースター)
●抽出/ハンドドリップ(カリタ)、エスプレッソマシン(サンレモ)
●焙煎度合い/浅~中深煎り
●テイクアウト/ あり(500円~)
●豆の販売/シングルオリジン4~5種、100グラム950円~

取材・文/田中慶一
撮影/直江泰治


※新型コロナウイルス(COVID-19)感染症拡大防止にご配慮のうえおでかけください。3密(密閉、密集、密接)回避、ソーシャルディスタンスの確保、咳エチケットの遵守を心がけましょう。

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