コーヒーで旅する日本/九州編|もっと知りたい、見てみたい。子供のような興味で歩んできた「珈琲美美」の46年
九州ウォーカー
全国的に盛り上がりを見せるコーヒーシーン。飲食店という枠を超え、さまざまなライフスタイルやカルチャーと溶け合っている。なかでも九州はトップクラスのロースターやバリスタが存在し、コーヒーカルチャーの進化が顕著だ。そんな九州で注目のショップを紹介する当連載。店主や店長たちが気になる店へと数珠つなぎで回を重ねていく。
九州編の第76回は福岡市にある「珈琲美美」。言わずとしれた福岡が誇るコーヒーの名店だ。冒頭で九州はコーヒーカルチャーの進化が顕著と述べたが、特に福岡は“コーヒーの街”と称され、海外から訪れた人々にとってコーヒー屋を巡るのが、観光の目的の一つになっている。それぐらいコーヒーは“福岡らしさ”を表すモノになっているが、その素地を作った一店として「珈琲美美」をあげないわけにはいかないだろう。1977年(昭和52年)の創業時から時流に惑わされることなく、自家焙煎、ネルドリップ、そして産地訪問を続けてきた自家焙煎コーヒー店。今や年齢も国籍も関係なく、多くの人を魅了する「珈琲美美」の魅力を改めて考察したい。
Profile|森光充子(もりみつ・みつこ)
長崎県諫早市生まれ。「珈琲美美」のマスター、故・森光宗男氏の妻で、開業時から店に立ち続ける。マスターと結婚するまではコーヒーとは無縁の暮らしをしていたが、現場に立ちながら少しずつコーヒーについて学びを深めていく。抽出は長年行ってきたが、マスターが亡くなる2年ほど前から焙煎も教えてもらっており、現在焙煎はすべて1人で担当。今は2人の娘さんを含め、スタッフたちに助けてもらいながら「珈琲美美」を切り盛りしている。
伝説の自家焙煎店で学び
九州のロースターやバリスタはもちろん、コーヒー好きな人で「珈琲美美」を知らないという人はほぼいないだろう。それぐらい同店の存在は広く知られている。その理由は今は亡きマスターの森光宗男氏の経歴、そして「珈琲美美」開業後、同氏による独自のコーヒーの探求があったから。
マスターが修業を積んだのは、吉祥寺の「もか」(現在は閉店)。伝説的な自家焙煎コーヒー店のマスター、故・標交紀(しめぎ・ゆきとし)氏のもとで約5年働き、福岡に帰郷。1977年(昭和52年)に福岡市・今泉に「珈琲美美」を開いた。長く標氏のもとで働いただけに、森光氏が「もか」の一番弟子といわれることもあるが、真偽は今となってはわからない。ただ「珈琲美美」には、かつて「もか」で使用されていた家具や調度品が多数存在する。焙煎機ももともと標氏が愛用していたマシンだという。そんなエピソードを聞く度に、「もか」が森光氏にとって特別な存在であり、一番弟子といわれるのもなんとなく腑に落ちる。
福岡のコーヒー文化を下支え
そして「珈琲美美」を開いた後が、森光氏にとって本当のコーヒーの探求の始まりとなる。店を営む傍ら、エチオピアやイエメンを視察し、コーヒーについて研究してきた。なんとイエメンに5回、エチオピアに7回、さらにはケニア、インドネシア、フィリピンなどにも足を運び、コーヒーのルーツを独自に紐解いてきたらしい。それらの記録の一部は「手の間」という福岡発の雑誌に掲載され、2012年には「モカに始まり」という書籍を発刊。2017年に多くの人の力によって同書の改訂版が発行されたことは記憶に新しい。
また、2010年には日本コーヒー文化学会 九州北支部が設立されるにあたり、「珈琲美美」が事務局を務めたこともあり、さらに幅広くコーヒーに関わる人たちと繋がりが生まれた。そんな経緯もあって、九州のロースターやバリスタ、特に次世代を担う若手たちから慕われている「珈琲美美」。もちろん、そこには純粋に「コーヒーがおいしい」という理由があるのは言わずもがなだ。
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