コーヒーで旅する日本/九州編|昭和期、福岡のコーヒー業界を支えて。そして今、地元愛あふれるコーヒー屋さんに。「ナガモトコーヒー店」
東京ウォーカー(全国版)
変わらないことが大切

そんな「ナガモトコーヒー店」で人気No.1なのが町名を冠したかすやコーヒー(100グラム620円)。“粕屋町に暮らす人々に愛されるように”、さらに“粕屋町ならではの手土産の品になれば”という思いを名前に込めた。ブレンドを作ったのは2代目の建太郎さんだ。

「私は幼少期からこの町で暮らし、粕屋町に愛着があります。父は自分なりのコーヒー道を歩んだ人でしたが、私は父が粕屋町で築いた『ナガモトコーヒー店』を受け継いだわけで、どちらかというとこの町に恩返しができるようなコーヒー屋でありたいと思っています」と話す。
淹れてもらったかすやコーヒーを飲んでみると、苦味、酸味、余韻の甘味のバランスが秀逸で、味わいに奥行きがあり、とてもおいしい。このバランスを引き出す焙煎士、ブレンダーとしての技術はさすがだと感じる。

建太郎さんに焙煎やブレンドといった工程でどんな点を意識しているのか聞いてみた。
「父は昔気質の職人肌だったので、焙煎について手取り足取り教えるということはあまりしなかったのですが、口酸っぱく言われたのが『火力』と『排気』のバランス、そして『温度変化』でした。排気が強過ぎると香りが抜け、逆に弱すぎると焦げ臭い雑味が残る。このバランスが焙煎では重要だと言っていたので、今もそこは特に意識を集中しています。ブレンドに関しては、やはり毎日すっと飲めるような味わいが大切。ここ数年、個性的なフレーバーを持った豆もあり、そういうコーヒーもスポットで楽しむ分にはよいのですが、毎日飲むとなるとちょっと違うかなというのが私の考え。なにより当店には父の代から長年通ってくださっているお客様がいるので、変わらない味を届けることができたらそれで十分」と微笑む。
こだわりという言葉を使わない

先代からの教えの中で、今も建太郎さんが心に留めている言葉がある。それが「こだわりという言葉は使うな」ということ。「父は直感に従い焙煎と向き合うタイプで、いかにも職人という感じでした。そんな性格だからか『どんなジャンルでもプロはこだわって当たり前。こだわりという言葉を使ってはならない』とよく言っていましたね。それは今も私の中のルールになっています。ですから店頭やホームページなどでも“こだわり”という言葉は一切使わないようにしています。たまに、めちゃくちゃプレゼンしたい商品ができたりするといろいろこだわりを述べたくなりますが、それはぐっとこらえて」と笑う建太郎さん。

豆売りの瓶には「コク強め」「あっさり系」などわかりやすい説明が書かれていたり、指標も「甘味」「苦味」「酸味」「コク」の4項目を5段階で表現されている。40年以上地域で愛される理由は、こんな飾らないスタイルにあるのかもしれない。
最後に今後の目標を尋ねると、「大きく変わらないことと、地域に暮らす方々にとって憩いの店であることでしょうか。私自身、商工会の理事を務めているので、粕屋町を盛り上げる一助になれたらうれしいですね」とにっこり笑った。

長本さんレコメンドのコーヒーショップは「珈香」
「福岡市の西新エリアにある『珈香』は父と交流があったマスターの智原さんが営む自家焙煎店。開業から30年近く経つ老舗なので、知っている方も多いと思います。昔から変わらない雰囲気がステキです」(長本さん)
【ナガモトコーヒー店のコーヒーデータ】
●焙煎機/フジローヤル半熱風式10キロ、COFFEE DISCOVERY 250グラム
●抽出/ペーパードリップ(HARIO V60)
●焙煎度合い/中煎り〜深煎り
●テイクアウト/あり
●豆の販売/100グラム500円〜
取材・文=諫山力(knot)
撮影=大野博之(FAKE.)
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