「道の駅」103駅から1160駅へ激増。専門誌編集長が語る“カギは役割の変化”

2019年11月6日 19:16更新

東京ウォーカー(全国版)

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ドライブ中の休憩施設としておなじみの「道の駅」。近年では、テーマパークのような大型の道の駅が開業したり、道の駅グルメを競う「道-1グランプリ」のようなコンテストまで開催されるなど、おでかけの目的地としても人気を集めている。1993年に制度化され、約25年で1160駅まで増加した道の駅は、なぜ急速にその在り方が変容したのか。地図情報の調査・制作・販売を行うゼンリンで『道の駅 旅案内全国地図』シリーズを統括し、1093カ所の道の駅に足を運んだスペシャリストである守屋之克編集長に話を聞いた。

ゼンリンで『道の駅 旅案内全国地図』シリーズに携わる守屋之克編集長


90年代後半の「直売所ブーム」が急増のトリガーに


24時間自由に利用できる一般道の休憩施設として、また地域振興の拠点として、1993年に正式にスタートした道の駅。制度スタート時の登録施設は103カ所だったが、2019年6月現在は全国で1160駅と、その数は約25年で10倍以上に増加した。だが、制度がはじまって約3年後の1996年4月時点の施設数は285か所と、登録数の増加は比較的ゆるやかだった。道の駅が急増するのは1990年代後半から2000年代前半にかけての10年間。2005年の第21回登録の時点で全国の道の駅は830カ所となり、現在の施設数の約70パーセントがこの時期までに登録されていることになる。その背景には、同時期に起こった「直売所ブーム」があると守屋氏は話す。

「道の駅」の実験施設があったことから発祥の地の1つとされる「道の駅阿武町」(山口県阿武郡阿武町)


「初期の道の駅は休憩場所としての機能がメインで、物販は大々的には行っていなかったんです。ですが1990年代後半、道の駅に限らず全国的に直売所ブームが到来し、道の駅での直売が一気に注目されるようになりました。その後、直売機能を最初から有した道の駅が登場するようになり、ブームに重なる形でその数を伸ばしたと言えます」

ゼンリンが初の「道の駅 旅案内全国地図」を販売したのも2001年のこと。それまでは各エリアの道の駅を収録した1枚地図を販売していたが、「全国の道の駅が一冊にまとまった地図はないか」という声がユーザーから上がり、需要に応える形で全国版のドライブマップとして販売をスタート。こうした背景もあり、2000年代前半には誰もが知るロードサイド施設として道の駅は定着した。

「メロンドーム」「プラネタリウム」…道の駅が個性を打ち出すワケ


【写真】屋根がメロン。道の駅 七城メロンドーム(熊本県菊池市)などユニークな施設も多数


同時期、地場産品であるメロンを建物のモチーフにした「道の駅七城メロンドーム」(熊本県菊池市)や、プラネタリウムを設けた「道の駅 富士川楽座」(静岡県富士市)のように、外観やサービスで個性を打ち出す道の駅も現れるようになる。守屋氏は、道の駅の多くが観光資源の乏しい場所に立地することが個性的な施設を生み出す一因となったと話す。

「道の駅はいわゆる観光地と呼ばれる場所を持っていない自治体が建てる傾向があります。それゆえ、道の駅は地域の個性をを強く打ち出し、施設のコンセプトをある程度まとめた上で情報発信をするようになったんです」

道の駅の観光地化を支えたのが、2007年前後に定年を迎えた団塊の世代だ。退職後の過ごし方として国内旅行を選ぶ層が増え、道の駅を訪れる人も増加。2009年から2011年まで実施された高速道路のETC土日休日料金割引、いわゆる「1000円高速」制度もこれを後押しし、遠方まで足を運び、行く先々の道の駅に立ち寄る旅のスタイルが生まれたという。

「各地方の道の駅を巡る人が増える中で、道の駅自身もまた、他の地域の人気の駅を参考にするようになり、ノウハウやニーズが反映されることでさらに駅の個性は細分化していきました。利用者のニーズの変化は、新規に作られる道の駅のトレンドに大きな影響を与えています」

道の駅の二大トレンドは「一点突破」と「目的地型」


25年の間にそのトレンドを目まぐるしく変化させる道の駅だが、守屋氏は今、2つのタイプの道の駅に注目しているという。1つは、一種類の名産品にポイントを絞った「一点突破型」の道の駅だ。

宇治茶の産地であることからお茶に特化した道の駅「お茶の京都 みなみやましろ村」(京都府相楽郡南山城村)


「最近の一点突破型の道の駅の例としては、京都の『道の駅 お茶の京都 みなみやましろ村』(京都府南山城村)があります。南山城村は宇治茶の産地で、道の駅もその名の通りお茶に特化。物販、レストランメニューやスイーツ、ソフトクリームまでお茶を使ってさまざまな商品を展開しています。昔からこのタイプは存在しましたが、地域の売りを一つの名産品などに定めていく手法は再び脚光を浴びています」

もう1つの注目が、休憩の枠を超えて道の駅の中で回遊を楽しめる「目的地型」の道の駅。守屋氏はその例に、2019年7月に開業した北関東最大級の道の駅「グランテラス筑西」(茨城県筑西市)を挙げる。

北関東最大級の道の駅「グランテラス筑西」(茨城県筑西市)


「複数のレストラン、物販の専門店、バーベキューや野菜の収穫体験、ドッグランまでコンテンツを凝縮して1日中楽しめるような、施設そのものが目的地になるタイプの道の駅です。こうした道の駅は今後増えていくと思います」

だが、一点突破型の道の駅には飽きられる恐れが、目的地型の道の駅は施設維持にコストがかかるという課題もある。こうした観光目的での道の駅が成功するためにはリピーターの存在が重要になると守屋氏は言う。

「長年人気の道の駅として有名な川場田園プラザ(群馬県川場村)は、来場者の約7割が首都圏からのリピーターで、エリア外の需要が大きい道の駅です。こうしたリピーターは、その道の駅の雰囲気が好きでリピーターになる場合がほとんどです。道の駅は完全民間の商業施設とは違い、本分である地域振興の役割を維持しながら運営する必要があるので、そうした制約の中で、その道の駅ならではの魅力が打ち出せるかが人気を分ける点ですね」

「おでかけスポット」から「地域の福祉拠点」へ。変容する道の駅の今後


多様化を続ける道の駅だが、若者の車離れも叫ばれる中、その在り方は今後どう変化していくのか。守屋氏は人口減少が進み、道の駅の国内観光需要はいずれ頭打ちになるだろうと指摘。むしろ、地域住民の生活拠点としての側面が強まっていくと話す。

「人口減少や高齢化が進み地域の生活圏が維持できなくなりつつある中で、道の駅を役場やガソリンスタンドなどの近くに設置して地域コミュニティの中心に据える『小さな拠点』化が数年前から国の指針で進んでいます。主要な施設を一カ所にまとめて利便性を高めるとともに、コミュニケーションの場としても機能させようというものです。

こうした背景もあり、新たにできる道の駅では鉄道駅やバスの結節点の近くに設置されたり、道の駅の一部で実証実験が行われている自動運転サービスの導入などにより、車を運転しない人も利用しやすいような工夫が各地で行われるようになりました。今後は、地元の人に道の駅を生活の場としてどう活用してもらうかという方向でのアプローチが進んでいくと思います」

道の駅の価値は「コミュニケーションの接点」


守屋氏自身、地域の人が集まる場所という点にこそ、道の駅ならではの魅力があると語る。

「道の駅の直売ではスーパーや市場と違い、近くの農家の方が農産物を持ってきて値付けをして棚に並べます。すると、『この野菜はどうやって食べたらいいですか』と利用者から気軽に話しかけられたりする。こうした形で自然と地域の人が集まることで、地域の人同士のコミュニケーションはもちろん、外部からやってきた方とも接点が生まれるんです。

また、『地元の人は自分の住んでいる場所を知らない』とよく言いますが、道の駅が新たにできると、『じゃあこの土地にはどんな魅力があるんだろう』と地域の人が改めて掘り返す。そこから再発見される魅力というものもあります。道の駅にはいい意味で当たりはずれというか、行ってみてはじめて分かる地域の色や面白さがある。地域の人と訪れる人双方にとって、そうした魅力を知るきっかけだったり、コミュニケーションの接点となるのが、道の駅の持つ大きな価値だと思います」

2019年9月にオープンした道の駅「高田松原」。東日本大震災津波伝承館が併設されている


2019年9月には津波で被災した道の駅「高田松原」が再建され8年ぶりに営業を再開。復興のシンボルの1つとなるなど、各地域にとって道の駅の存在は大きなものとなっている。一方で、積水ハウスとマリオット・インターナショナルが道の駅に隣接したホテルの開業を進めるなど、訪日観光客の需要も視野に入れた事業も進む。道の駅は今、地域の中で「人が集まる場所」として、大きな岐路を迎えている。

国分洋平

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