チーム広報が振り返る、名古屋グランパスのJリーグ初制覇の舞台裏《10周年特別企画・前編》

東海ウォーカー

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偶然であり、必然。ついに訪れた歓喜のとき


湘南戦後の優勝セレモニーの様子(C)N.G.E.

2010年11月20日(土)に平塚競技場(現・Shonan BMWスタジアム平塚)で開催された、第31節・アウェイ湘南ベルマーレ戦。同時刻には2位につける鹿島アントラーズが、J2降格圏に沈むヴィッセル神戸と同じくアウェイで対戦していた。

グランパスが湘南に勝利し、2位の鹿島が引き分け以下ならば念願の初優勝が決まるという状況。だが、“勢いのある鹿島が調子の悪い神戸に勝利し、さすがに今節では決まらないだろう”というのが戦前の大方の予想だったように思う。

2010シーズン第31節アウェイ湘南戦のスターティングイレブン(C)N.G.E.

平塚競技場では66分、途中出場したばかりの杉本恵太選手が持ち前の俊足で右サイドを切り裂きクロスを上げると、走り込んだ玉田圭司選手がヘディングで合わせてグランパスが先制。0-1でグランパスがリードしたまま試合がさらに進んでいくと、グランパスベンチの周辺にいた報道陣の動きが慌ただしくなっていく。

終了間際には、他会場で鹿島が引き分けたことを知ったストイコビッチ監督が満足そうな表情を見せる。当時のテレビ中継でも映し出されたどこか得意気な英雄のその顔は、グランパスのファン・サポーターならきっと今でも忘れられないはずだ。

試合終了のホイッスルを聞き、両手を突き上げるストイコビッチ監督(C)N.G.E.

やがて、歓喜のときは訪れた。主審が3度のホイッスルを吹くと同時に、ピッチサイドにいたグランパスの控え選手たちが一斉にピッチ内に向けて走り出す。その光景を見て自分たちが優勝したことを悟った出場メンバーたちも喜びを爆発させたのである。最終節まで3節を残しての優勝決定は、現在でもJリーグ史上最速記録となっている。

湘南ベルマーレ戦後、マイスターシャーレを掲げて優勝の喜びを分かち合う選手たち(C)N.G.E.

「鹿島さんの調子もよかったですし、正直なところこの日に(優勝が)決まるとは思っていませんでした。メディアの方との事前打ち合わせなどの準備は当然していましたが、心の準備はできていませんでしたね(笑)。試合後には名古屋市内のホテルへ移動してシャンパンファイトをすることになっていましたが、帰りの新幹線ではテレビ局や新聞社から取材依頼の電話が鳴りっぱなし。一方でテレビに出演する選手をグルーピングして内容を説明して…と、バタバタでした。結果、翌朝の午前3:00~4:00ごろまで対応に追われていましたね。クラブとしても初めてのことなのでわからないことばかり。とにかく忙しすぎて、実はあまり記憶がありません(笑)」

ストイコビッチ監督の胴上げ。クラブ初となるリーグ優勝だった(C)N.G.E.

クラブの規模や戦力の面から期待はされながら、2009年まではリーグ制覇の栄冠を手にすることができなかったグランパス。優勝争いにも残留争いにも無縁で、上位チームに勝利したかと思えば下位チームには敗れるという不安定さから、“グランパスには中位力がある”と揶揄されることもあった。しかし、ストイコビッチ監督のもとで悲願を達成。さぞ感動にあふれた時間だったのではないかと問えば、梅村氏は喜びに浸る間もなかったと振り返る。それでも、試合後に到着した名古屋駅での光景だけは忘れられないという。

ファン・サポーターや地域の方々の喜ぶ姿が自分の喜び


アウェイゴール裏に詰めかけたサポーターにマイスターシャーレを見せるストイコビッチ監督(C)N.G.E.

「名古屋駅で新幹線を降りてからホテルに向かうタクシーに乗るまでの間、ほんのちょっとの距離なのですが、大勢のファン・サポーターの方が出迎えてくれました。(優勝の証であるマイスター)シャーレを手に移動する監督や選手にたくさんの声援と拍手を送ってくださって。あの光景は今でも強く心に残っています。グランパスというクラブの存在がこの街の皆さんの喜びになっていると実感して、とても感動しましたね。ひと段落してからも同じように、ファン・サポーターや地域の方々の喜ぶ姿が自分の喜びとなっていたように思います」

それから今日まで、チームは決して順風満帆とは言えず、さまざまな思いが入り乱れる、まさに喜怒哀楽な10年間だったと言えよう。しかし、名古屋グランパスにとって2020シーズンが大きな節目であることもまた疑いようのない事実だ。そして、ここまでの10年がどうあれ、チームが今見据えるべきは未来である。新型コロナウイルスの感染拡大の収束と、シーズン再開が待ち望まれる現在、選手もスタッフも次なる輝かしい軌跡を作ろうとそれぞれが準備をしているはずだ。

「世代交代が進んだ今シーズンは、『自分たちが新しいクラブの歴史を作っていくんだ』といういい雰囲気がありますね。実績のある選手もいますし、今のメンバーなら十分に優勝のチャンスがあると思っています。チーム広報として、その時が来ることを心待ちにしています。10年前の優勝は初めての経験で広報業務に追われてしまったので、次こそは心に余裕を持って、もう少し喜びの瞬間を楽しみたいですね(笑)」

(取材=初野正和/文・構成=吉橋和宏)

《10周年特別企画・後編》「チーム広報が語る、名古屋グランパスのクラブ改革」はコチラ

※新型コロナウイルス感染の影響を考慮し、2020シーズンの明治安田生命J1リーグは中断しています。2020年7月4日(土)より、条件付きでの再開となります

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