化学メーカーがなぜ乳製品事業に?「パン好きの牛乳」1000万本ヒットで見えたネーミングの極意
東京ウォーカー(全国版)
「カガクでネガイをカナエル会社」というフレーズを聞いたことがある人も多いのではないだろうか。これは化学メーカー「カネカ」のキャッチコピーだ。そんな「カネカ」は2018年から「パン好きの牛乳」という商品で乳製品事業に参入し、発売本数はシリーズ累計1000万本を突破。商品開発の裏側やヒットの一因となったネーミング戦略について、販促企画を担当している齋藤智夏さんに話を聞いた。
パンと牛乳の相性に注目した商品開発
主にBtoB(卸売と小売間などの企業間取引)をメインとし、住宅の断熱材を作る部署やサプリメントを作る部署など、さまざまなジャンルを展開している「カネカ」。
同社は「世界を健康にする」という経営理念の元に、「社会課題を解決していくことが自分たちの成長に繋がる」という考え方がすべての事業の根底にあるという。その中で、酪農家の戸数や占有数が減っているという食糧問題に注目し、乳製品事業への参入が始まった。
「化学メーカーということで、一般的には食品を手がけているイメージがないと思うのですが、実は4分の1が食品事業で、売り上げも同様の割合を占めています」(齋藤さん)
そんな「カネカ」が、乳製品の後発メーカーとして他社に埋もれないためのアイデアとして開発したのが、パン専用の牛乳だという。
「昔からマーガリンや油脂系、イーストなどを扱っており、製菓・製パン業界と繋がりが深いことから、牛乳を飲むシーンのリサーチとして、パン愛好家の意見を聞く機会があったんです。パンが好きで毎日のように食べている方々によると、牛乳が濃すぎるとパンを楽しめないそうなんです。そういった発見を経て、“コクはあるけれど、パンの味を邪魔しない牛乳”という方向性が見えました」
開発秘話として、齋藤さんはもうひとつ興味深い話を教えてくれた。
「いろいろな調査を参考にすると、牛乳を飲む時の食べ物としてパンを選ぶ割合は7割なのに対し、パンを食べる時に飲む飲料として牛乳が選ばれるのはわずか3割。また、パンを食べる時の飲料と同じ調査では、その8割以上が週に1回以上はパンを食べていて、1日1〜2回、週に2〜4回がボリュームゾーンでした。そこで、パンを食べる時の選択肢として牛乳が入る余白はまだまだあると考えたのが、パンに合う牛乳に焦点を絞った理由でもあります」
“自分ごと”だと思ってもらうネーミングがヒットのカギ
そうして商品の方向性が決まったが、パンとの組み合わせに特化した牛乳ということをアピールしたネーミングについては、決定までに紆余曲折があったという。
「ネーミングに関しては、社内や入っていただいたコンサル会社などから100以上の案が出ました。産地をうたったものやおいしさをうたったもの、味わいに特化したものなど、いわゆるよくある表現をしたものが中心で、それでは陳列棚に並んだ時に埋もれてしまうというのが後発メーカーとしての悩みどころでした」
そこで行き着いたのが、“喫食シーン”からイメージを膨らませたネーミングだ。これには、たくさんの商品の中で目を引くという以外にも、訴求ポイントがあるという。
「“パン好きの”というフレーズを見て、“自分のことだ”と感じて手を伸ばしていただくことが多いようです。また、普通の牛乳とどう違うのか、ということが気になる方もいらっしゃいますよね。なので、このネーミングのおかげで、普段と違う牛乳を手に取ってみるというトライアルにも繋がっていると思っています。また、パン店からも『おもしろいね、うちのための商品じゃないか』というようなお声をよくいただきます。パン専用飲料としてお店に置いてあることで、パンと一緒に購入してくださる方も多いです」
「パン好きの牛乳」がヒットしたことでわかったネーミングのコツとして、「自分ごとだと思ってもらうことが大事」と齋藤さん。
「○○産、○○100%という一般的なうたい文句が響かない相手でも、第一印象であるネーミングを通して、“あなたのためのものです”ということをわかりやすく伝えると刺さるのだと思います。伝え方によって受け取り方も変わってくると思うので、それはこれからも意識していきたいなと思います」
同じまとめの記事をもっと読む
この記事の画像一覧(全12枚)
キーワード
テーマWalker
テーマ別特集をチェック
季節特集
季節を感じる人気のスポットやイベントを紹介
全国約1100カ所の紅葉スポットを見頃情報つきでご紹介!9月下旬からは紅葉名所の色付き情報を毎日更新でお届け。人気ランキングも要チェック!
おでかけ特集
今注目のスポットや話題のアクティビティ情報をお届け
キャンプ場、グランピングからBBQ、アスレチックまで!非日常体験を存分に堪能できるアウトドアスポットを紹介