数カ月間飲まず食わずで子育てするホッキョクグマ。40年ぶりに誕生した赤ちゃんや、飼育について聞いてみた【会えなくなるかもしれない生き物図鑑】
東京ウォーカー(全国版)
愛らしさと危険性の二面性が魅力でもある
――地上最大の肉食獣であるホッキョクグマを「間近に感じられるのは飼育係の特権」と、大西さんは話す。
450キロもある生き物を檻1枚はさんだだけで間近に感じられるのは、飼育係の特権。毎日見ていても「こいつスゴイな」と思います。本来なら、北極まで行かなければ見られないはずの生き物です。そばで見ると、恐ろしさも迫力も感じます。
さらに今回、子育ても見られたのはとても貴重な体験。本来、ホッキョクグマの巣穴の中なんて人間が絶対に入れない空間ですが、暗視カメラを通じて母親が一生懸命、愛情を注いでいる様子も観察できました。
ホッキョクグマはかわいい見た目からファンの多い動物ですが、飼育係として接する中では危険を感じる動物でもあります。野生ではアザラシを襲って食べているわけですから、遠目には愛らしいけど、爪が鋭く、絶対に檻の中には入れません。人間を寄せ付けない、野生動物です。そこもまた、魅力であると感じています。それだけに私たちは、施錠に関して細心の注意を払います。一歩間違えば大事故につながりかねません。
今しか見られないホッキョクグマの赤ちゃん。愛情深い親子の関係性を見て
――ホッキョクグマの繁殖が難しい中、赤ちゃん誕生のニュースは朗報であり、私たちにとってもまたとない機会でもある。
ホッキョクグマは希少な動物です。それが繁殖し、赤ちゃんが見られるのは本当に今だけ。いつまでも見られるわけではありません。実際、当園でも40年ぶりの繁殖です。現在、ゆめはお母さんのピリカに守られながら元気に成長しています。
お母さんはひと時も子供から目を離さず、プールに落ちそうになればかばうような動きをするなど注意深く、愛情深く育てています。親子の関係性を見られる貴重な機会なので、足を運んでいただけるとうれしいです。
取材・文=鳴川和代
監修=久保田潤一(NPO birth)
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